メンタルヘルスケアに対する取り組み

 今回も、前回に引き続き「メンタルヘルスケアに関する調査」(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)より、メンタルヘルスケアに対する取り組みについて考えてみます。


 前回、8割近い企業でメンタルヘルス不全者が増加したという内容をご紹介いたしました。この結果に対する企業側の意識としては、実に9割の企業がメンタルヘルスケアを重要な課題として位置づけている結果が出ています。このような意識の高まりについては、メンタルヘルスの問題が「生産性の低下」や「重大事故の発生」など、実際の企業パフォーマンスに影響を及ぼすと考えられていることが、調査にも表れています。


 それでは、具体的なメンタルヘルスケアとしてどのような取り組みがなされているのでしょうか。調査結果(複数回答)を見てみましょう。
 1.階層別の教育・研修(70.5%)
 2.社内の相談窓口・室の設置(63.6%)
 3-1.従業員の教育・研修(56.8%)
 3-2.残業削減など労働環境の整備(56.8%)


 このように様々な対策が進められていますが、多くの企業で行なわれている具体的な内容について解説します。
1.階層別の教育・研修
 主にはメンタルヘルス不全が疑われる部下への対応方法や傾聴スキル習得など管理職の実務に対する研修がよく行なわれています。


2.社内の相談窓口・室の設置
 メンタルヘルスに不安が生じた場合に気軽に相談できる体制を用意するものです。大企業では産業医と連携し、専門の看護師を配置などの対応が行なわれていますが、中小企業では人事部や総務部が相談窓口となったり、またEAP業者の活用なども進められています


3-1.従業員の教育・研修
 コミュニケーション技法やストレスマネジメントなど、メンタルヘルスに関連した知識やスキルを習得できる研修がよく行なわれています。


3-2.残業削減など労働環境の整備
 残業時間の実態調査把握、これに伴う業務分担の見直しなど、メンタルヘルス不全に重要な影響を及ぼすと考えられる長時間労働対策などが行なわれてます。


 現状のメンタルヘルス問題の原因は、仕事と密接な関連があることが多いされています。特に、上司と部下の関係についての問題は大きく、階層別の研修では、管理職に対して部下の接し方というテーマが頻繁に取り上げられています。一方で、メンタルヘルス不全者については、まだ偏見が大きく、接し方がよく分からないといった声も多いことから、これを取り除くような取り組みも重要でしょう。また今後は、メンタルヘルス不全になる前の予防に関する事前の取り組みが強く求められています。


(宮武貴美)