ダイレクトコミュニケーション

  中小企業では、社長自身が先頭に立って改善改革をするが空回りしてしまい、社長の思いがきちんと果たせずにヤキモキしているパターンがよく見受けられます。セブン&アイホールディングスの代表取締役会長で最高経営責任者(CEO)の鈴木敏文氏が、日経フォーラムの世界経営者会議において、社員の意識改革を図るときのコミュニケーションの重要性について以下のように述べていました。


「社員の意識改革を図る際、大事なのはコミュニケーションの手法だ。改善ならボトムアップでもいいが、改革ならトップダウン、ダイレクトコミュニケーション以外ない。」


 このことは2005年10月25日の日経新聞にも紹介されています。


 記事では氏の話を要約し、「1500人の管理職を毎週本社に集めて直接話をしている。年間数十億円のコストがかかる上、移動の時間の無駄という指摘もあるが、直接、顔を見ながら話すことで、ニュアンスの違いなどがなくなる。トップとの縦のラインをできるだけ短くすることが大切だ。」とまとめています。


 私もこの意見には非常に感銘を受けました。中小企業の経営者に接する機会が多い私でも感じていることです。特に中小企業は、社長自身が先頭に立って改善改革をしているケースが多いです。しかし、なんとなく空回りしてしまい、社長の思いがきちんと果たせずにヤキモキしているパターンがよく見受けられます。このようなことが起きてしまうのは、結局は社長の思いが上手に伝わっていない、つまり、うまくコミュニケーションがされていないところに大きな原因があるのではないでしょうか。中小企業の会議の現場に同席していても、社長が一方的に話すだけで対話が無いと感じることがあります。社長は自分が思いを話したら、その反応をを確かめるとか意見をもらうとか、対話してコミュニケーションを図り、思いが伝わっているかを確認する一歩前進が必要です。


 コミュニケーションとは、「人間が互いに意思・感情・思考を伝達し合うこと」(「大辞林第二版」より)です。一方通行では成り立ちません。コミュニケーションを上手にすることで、社長の思い
も社内に浸透し、「思いの空回り」を防げるのではないでしょうか。


(佐藤澄男)