各高齢者雇用確保措置のメリット・デメリット

 高年齢雇用安定法の改正により、平成18年4月より、現在定年制を定めている企業では、定年を65歳まで引上げるか、継続雇用制度を導入するか、定年制を廃止するかのいずれかを選択しなければなりません。それぞれの制度には一長一短があり、制度が抱える課題等を十分把握した上で慎重な対応が求められます。本日はそれぞれの制度のメリット・デメリットについてまとめてみました。参考にして下さい。


1)定年の引上げ
[メリット]
◆制度の導入がもっとも簡単である。
◆全社員に対して安定した雇用を保障することができる。
◆高齢者の知的資産を維持し続けることができる。
[デメリット]
◆雇用を延長する社員の選抜を行うことができない。
◆コスト(給与)とパフォーマンス(労働)が見合っていない社員を雇用することで若年層のモチベーションが低下することがある。
◆退職金制度の取扱いなどが問題となることが多い。


2-1)継続雇用制度(勤務延長制度)の導入
[メリット]
◆対象者の選抜を行うことができるため、一定以上の職務遂行能力を持つ高齢者のみを雇用することができる。◆制度の対象基準を明確に定めることができるため、社員に緊張感を与えることができる。
[デメリット]
◆選抜に漏れた社員のモチベーションが低下する可能性がある。


2-2)継続雇用制度(再雇用制度)の導入
[メリット]
◆対象者選抜を行うことができるため、一定以上の職務遂行能力を持つ高齢者のみを雇用することができる。
◆ノウハウや知的資産を有する社員を比較的低い賃金で雇用することができる。
[デメリット]
◆処遇面で折り合いがつかず、退職するリスクを抱える。
◆選抜に漏れた社員のモチベーションが低下する可能性がある。


3)定年制の廃止
[メリット]
◆高齢社員の意欲を引き出し、また優秀な高齢者の雇用を促進することができる。
◆会社のイメージアップに繋がる。
◆ノウハウや知的資産を有する社員を雇用し続けることができる。
[デメリット]
◆社員の退職時期が不定となるため、要員計画が立て難い。
◆ノウハウや知的資産を継承する環境を構築しなければ、下の世代に伝承させることが難しくなる。
◆契約終了時のルールなどで問題が起こりやすい。


 ほとんどの企業では2-2の再雇用制度を導入することになることが予想されていますが、企業の人事労務管理および社員の生活設計にも大きな影響を与える事項だけに、十分な検討が求められます。



 なお先週の金曜日に厚生労働省より「改正高齢法の施行に向けた企業の取組状況」の集計結果が発表になっていますので、こちらもあわせてご参照下さい。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/12/h1216-1.html


(服部英治)