育児休業等に関し事業主が講ずべき措置(その2)
先週に続き今週も、「育児休業等に関し事業主が講ずべき措置(その2)」として、以下4点についてご紹介及び解説させていただきます。
①幼児期の子を養育する労働者に対する措置
②家族の介護を行う労働者に対する措置
③労働者の配置に関する配慮
④再雇用特別措置等
①幼児期の子を養育する労働者に対する措置について
<条文>
事業主は、3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者について、育児休業の制度又は勤務時間の短縮等の措置に準じて、必要な措置を講ずるよう努力しなければなりません。
《解説》
育児休業から復帰した後に働き続けるうえで必要な子育ての為の時間を確保するためには、短時間勤務制度やフレックスタイム制などの勤務時間の短縮等の措置等が、小学校始期に達するまでの子を対象として実施されることが望ましいとされています。
よって、上記対象労働者について勤務時間の短縮等の措置等を講ずる努力義務が事業主に課せられているところなのです。
②家族の介護を行う労働者に対する措置
<条文>
事業主は、家族を介護する労働者について、介護休業の制度又は勤務時間の短縮等の措置に準じて、その介護を必要とする機関、回数等に配慮した必要な措置を講ずるよう努力しなければなりません。
《解説》
介護休業の制度に関する内容は、すべての企業に一律に義務付けられる最低基準となります。休業期間、取得回数、対象となる家族の範囲、介護を要する状態、勤務時間の短縮など、考慮すべき様々な事項があります。これらの事項に関しては、法で定められた最低基準を上回る制度を労使の努力によって決定していくことが望まれています。
「その介護を必要とする期間、回数等に配慮した」とは、当該労働者による介護を必要とする期間、取得回数、対象となる家族の範囲、介護を要する状態など様々な事項に配慮する必要があることをいいます。具体的には次の事項に留意しつつ、企業の雇用管理等に伴う負担との調和を勘案して、必要な措置を講ずる努力が求められています。
1)労働者が介護する家族の発症からその症状が安定期になるまでの期間又は介護にかかるサービスを利用する事ができるまでの期間が93日を超える場合があること。
2)既に93日を超えて介護休業をしたことがある又は勤務時間の短縮等の措置が講じられた対象家族についても、再び介護を必要とする状態となる場合がある。
3)対象家族以外の家族についても、他に近親の家族がいない場合等労働者が介護をする必要性が高い場合があること。
4)要介護状態にない家族を介護する労働者であっても、その家族の介護のため就業が困難となる場合があること。
5)労働者が家族を介護する必要性の程度が変化する事に対応し、制度の弾力的な利用が可能となることが望まれる場合があること。
上記①、②の「必要な措置」とは育児休業の制度又は勤務時間の短縮等の措置及び介護休業の制度又は勤務時間の短縮等の措置と必ずしも同一の措置であることを要しませんが、労働者がその適用を受けるかどうかを選択できるものであること、及び男女が対象となることなど、考え方を共通にする必要があると考えられます。
③労働者の配置に関する配慮
<条文>
事業主は、労働者を転勤させようとする場合には、その育児又は介護の状況に配慮しなければなりません。
《解説》
事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業場所の変更を伴う転勤をさせようとする場合において、当該労働者の育児や介護の状況に配慮し、労働者が育児や介護を行う事が困難とならないよう気にかけることが必要となります。
具体的例示としては以下のようなものがあげられます。
1)その労働者の子の養育又は家族の介護の状況を把握すること。
2)労働者本人の意向を汲み取ること。
3)就業場所の変更を行う場合は、この養育又は家族の介護の代替手段の有無の確認を行うこと。
等をいいますが、これらはあくまでも配慮することの内容例示であるため、他にも様々な配慮が考えられます。また、転勤の配慮の対象となる労働者が養育する子には、小学生や中学生も含まれます。
④再雇用特別措置等
<条文>
事業主は、妊娠、出産若しくは育児又は介護を理由として退職した者に対して、必要に応じ、再雇用特別措置その他これに準ずる措置を実施するよう努力しなければなりません。
《解説》
「再雇用特別措置」とは、退職の際に、将来その就業が可能となったときに退職前の事業主に再び雇用されることの希望を有する旨の申出をしていた者について、事業主が労働者の募集・採用に当たって特別の配慮をする措置を言います。これは男性労働者についても同様です。
※介護休業に関連する事項については、後日あらためてご紹介します。