高年齢者雇用安定法改正のポイント 労働時間による手取額の違い

 高年齢雇用安定法の改正により、2006年4月以降、現在定年制を定めている企業では、1)定年延長、2)継続雇用制度導入、3)定年制廃止のいずれかの選択を迫られることになります。このうち、現実的には2)の継続雇用制度を選択する企業が相当数あると言われており、実際に多くのシンクタンクの調査においても継続雇用制度を導入する企業が多数を占めているという報告もあるようです。この継続雇用制度を導入する場合には、1)定年延長や3)定年制廃止と異なり、従来の処遇を引き継がないという考えが一般であり、本人の希望を考慮した上でパートやアルバイトといった形態で運用する方法がよく見られます。


 改正高年齢雇用安定法では、企業に対して雇用義務を課すものの、どのような形態で雇用するかまでは求められておらず、仮にパートやアルバイトとして勤務をさせたとしても、法改正に対応したものとして扱われることになります。従って、多くの企業が継続雇用制度を選択した上で、パートやアルバイトといった雇用形態で勤務することが予想されますが、ここにおいては労働時間と手取り賃金の関係について勘案して、労働条件を設定することが求められます。この検討を行なわないままに労働条件を設定すると、労働時間によっては、年金を含めた手取り額が逆にマイナスになる場合があるため注意が必要です。この場合の労働時間別の影響をまとめてみましょう。
1.労働時間が週20時間未満である場合
 雇用保険や社会保険への加入がないため、年金を含めた手取り額が調整されることはない。
2.労働時間が週20時間以上30時間未満である場合
 1年以上の雇用継続が見込まれる場合には、雇用保険への加入が求められます。給与額によっては高年齢雇用継続給付が受給できる場合があります。社会保険への加入がないため、年金が支給停止になることはありません。
3.労働時間が週30時間以上の場合(概ね常勤社員の4分の3以上勤務をしていること)
 雇用保険および社会保険への加入が必要となるため、その後の給与額によっては、年金額の一部が支給停止となる場合があります。


 上記から本人の手取りをある程度保障するには、1またはび2の選択肢が有力となります。しかし、短時間勤務によって、そもそもの業務が中途半端になっては本末転倒ですので、雇用継続の目的を改めて検討し、慎重に雇用形態を決定されることをお勧めします。


(服部英治)