高年齢者雇用安定法改正のポイント 雇用延長に関連して検討すべき事項
高年齢雇用安定法の改正により、現在定年制を定めている企業では2006年4月までに、1)定年の延長、2)継続雇用制度の導入、3)定年制の廃止のいずれかを選択し導入しなければなりません。これらの制度にはそれぞれメリット・デメリットがありますが、これに関連し、以下のような潜在的なリスクも存在するため、その回避に向けた対策を予め検討することが求められます。
1)退職金制度
ほとんどの企業では勤続年数に応じた退職金の支給が行われていますので、定年延長や定年制の廃止の場合にはその影響について、事前に対応する必要があります。この対応を行わずに定年の延長だけを行った場合には、退職金算定における勤続年数の長期化により、直ちに支給額の増加に繋がります。これを防ぐためには「退職金計算における勤続年数は旧定年年齢である60歳時の勤続年数を上限とする」といった退職金規程の修正が必要となります。
2)制度変更に伴う不利益変更
60歳以降の賃金を下げるという取扱いを行う場合には、労働条件の不利益変更として扱われないように、就業規則や労働契約書の整備を行う必要があります。今回は雇用延長制度の導入という前提がありますので、大きな問題を抱えることは少ないと思われますが、制度導入においては会社側から一方的に通達するのではなく、労使で十分に話し合うというプロセスを経ることが求められます。
3)健康管理
事業主には、社員の安全衛生管理義務が課せられており、その一環として社員の健康管理を行わなければなりません。毎年1回定期的に実施される健康診断は最低限必要ですが、高齢者については早めの身体の異常を発見するためにも、半年に1回程度健康診断を行い、自主的に健康管理を徹底してもらうといったことを行うことが望ましいでしょう。
4)社員のモチベーション管理
ベテラン社員の雇用確保を進めると、直ちに出てくるのがポスト不足の問題です。ポスト不足は中堅社員を中心に、そのモチベーションを低下させる危険性がありますので、役職定年制など、仕組みとしてポスト不足を回避することも検討すべきでしょう。
(服部英治)