監督署による調査が進められる偽装派遣問題

 昨年末に東京労働局が「首都圏 派遣・業務請負適正化キャンペーン」の実施結果について、そのwebsiteで発表を行ないました。東京労働局では、「派遣と請負の適正化を集中的に推進」しており、この趣旨を考えると請負等を偽装した労働者派遣が多く見られる実態を問題視していることが分かります。そこで今回は、改めて派遣と請負の違いを確認しておきましょう。


 労働者派遣とは「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣法」という)」の第2条で「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」としています。従って、労働者にとっては雇用契約を締結する「雇用主」と、指揮命令を受ける「使用主」がおり、この2者の間には労働者派遣契約が存在します。


 一方、請負については、民法第632条で「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」としています。ここで分かることは、請負契約は「仕事の完成」がその目的とされており、そのプロセスたる労務提供については触れられていません。従って、請負人と雇用契約を締結している労働者は、その請負人の指揮命令のもとで就労する、つまり「雇用主」と「使用主」は同一となることが特徴的です。


 問題視されている偽装請負・違法派遣は、構内下請けのように、請負契約に基づく業務を発注元で行う場合に多く見られます。この場合には、請負契約であるにも関わらず、実態として発注者がその労働者に対し、直接指揮命令することが実態として少なくありません。この原因としては、派遣と請負の区別が実際の指揮命令権者まで浸透していないことに問題の一端があると考えられます。


 現状は派遣、請負の区別がつかない中での、無意識内での違法派遣の利用もあるでしょう。今後、平成19年3月には物の製造の業務についても最大3年間まで派遣期間が延長になり、より利用しやすくなることが予想されますので、現状の派遣契約、請負契約を見直しをすることが必要になっているといえるでしょう。


□関連リンク
東京労働局「製造業における業務請負と労働者派遣についての調査」結果[pdf]
http://www.roudoukyoku.go.jp/news/2005/20051227-seizou/20051227-seizou.pdf
東京労働局「首都圏 派遣・業務請負適正化キャンペーン」の実施結果について[pdf]
http://www.roudoukyoku.go.jp/news/2005/20051227-campaign/20051227-campaign.pdf


(宮武貴美)