心に不安の社員増加
2005年11月26日付けの中部経済新聞に「『心に不安の社員増加』8割」と題したセンセーショナルな記事がありました。これは、厚生労働省所管の労働政策研究・研修機構の調査発表によるもので、過去5年間でメンタルヘルス(心の健康)に不安のある従業員が「増えた」「やや増えた」と応えた企業が、なんと78%に達したと報じています。同調査では、さらに今後についても、76%の企業が一層の深刻化を予想しています。
不安の原因の主だったものとしては、「仕事の責任のストレス」が26%、「職場の人間関係のストレス」が25%、「企業再編など職場環境の大きな変化によるストレス」が18%と上位を占めています。職場においてそれぞれの人が置かれた環境が、その人の心の問題に深く関わりあっていることがうかがえます。
更に、心の不安で休職する時期に関する調査では、若年層後期が55%、次いで入社10年程度の若年層前期が25%という結果でした。若年層後期が圧倒的に多いのですが、この年代は、主任や補佐などの課長職直前の世代です。数名の部下やある程度のプロジェクトを任され、上司と部下の板ばさみや仕事そのものの責任の重さから強いストレスを感じる立場にあります。社内での地位やポジションも将来を保証された確固たるものではないため、先行きに強く不安を覚える人が多い年代でもあります。
これに対しての企業の対策としては、特に画期的な方法が採られているというわけではありません。同調査によると、長時間労働者に対するケアが中心で、一定時間以上働いている従業員に対して「面談を義務付けている」企業が46%という程度で、目立った対策は見受けられません。
この調査は従業員1000人以上の企業を中心に95社が回答したようですが、この問題は大企業だけではなく、中小企業においても同じ傾向が見られるのではないでしょうか。しかも中小企業の場合では、どうしても人の補充がままならず、対策も後手になりがちですので、企業全体に与えるダメージも多いと考えられます。
労働者のメンタルヘルスの問題は、最近になってやっと注意喚起がなされてきましたが、まだまだ経営者の意識の中では関心の薄い分野です。心の問題に着手するのはなかなか難しく簡単にはいきませんが、経営の重要要素と考える必要があります。まずはそれぞれの企業の中で、従業員達の心の中にどのようなストレスや不安が存在しているのか、問題を抽出するところから始めてみてはいかがでしょうか。
(佐藤澄男)