労務監査における労働時間制度のポイント その4:手待時間、接待・宴会

 今回も前回に引き続き、労務監査における労働時間監査のポイントについて解説させていただきたいと思います。今回は下記テーマのうち、 7)手待時間、待機時間、8)終業時間後の接待、宴会などについて解説します。
 1)準備作業、後始末の時間
 2)朝礼、訓示の時間
 3)研修時間
 4)持ち帰り労働
 5)健康診断の時間
 6)休憩時間中の電話当番
 7)手待時間、待機時間
 8)終業時間後の接待、宴会など


7)手待時間、待機時間
 手待時間、待機時間とは現実に作業に従事していないが、使用者から就労の要求があればいつでも就労できる状態で待機している時間のことを言います。この時間は使用者からの就労要求に応じるように一定の拘束下に置いて待機していることから、仕事から完全に離れることを保障されている時間ではありません。休憩時間は「労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間」(昭和22年9月13日発基17号)と定義されていますので、この手待ち時間、待機時間は休憩時間ではなく、労働時間に含まれることになります。


 「手待時間」に類似したもので「手空き時間」といわれるものもあります。手待時間よりも仕事からの解放の程度が高いものを総称しているようですが、一概に休憩時間と同様のものと認められるわけではなく、ケースごとに労働者が労働から解放されているかどうかを判断しなければなりません。


8)終業時間後の接待、宴会など
 終業後に職場反省会などの名称で従業員が職場に残って会議や検討会を実施することがありますが、これらが時間外に実施された場合に、当該時間が労働時間にあたるのかどうかという判断が必要になります。しかし、これも実態から判断するしかりません。例えば全員参加の反省会と称していても内容が従業員相互の親睦を図るための飲食であった場合は労働時間とはなりません。これらが労働時間となるのは、それに参加しないことについて不利益が定めれられており、明示または黙示の業務命令としてなされていると認められる場合です。「労働者が使用者の実施する教育に参加することについて、就業規則上の制裁等の不利益取り扱いによる出席の強制がなく、自由参加のものであれば労働時間にならない」(昭和26年1月20日基収2875号)という行政解釈もあります。この不利益とは欠勤とみなすなどの直接的な不利益ではなく、賞与や昇給、人事考課において出席の有無を基準として評価しているなど間接的なものも含まれます。


 終業後の得意先の接待や宴会などは、飲み食いが主たる目的の場合は労働時間にはなりません。しかし得意先の通夜など儀礼的な色合いが濃く、飲食は副次的に伴うに過ぎない場合は、使用者の指揮命令による業務遂行時間、すなわち労働時間と考えられます。ただし、労働時間の計算については労働時間の算定の難しさ故に、いわゆる「みなし労働時間」が適用される場合もあるとされます。


 以上、4回にわたって労働時間について様々なケースごとに解説させて頂きました。ご参考いただければ幸甚です。


(神谷篤史)