「今後の労働時間制度に関する研究会報告書」に見る年次有給休暇制度見直しの方向性

 先日の日本経済新聞のトップに「有給休暇 計画取得義務付け検討~厚労省」という記事が掲載され、今後の年次有給休暇制度の法改正に関する注目が高まっています。この記事は現在検討が進められている「今後の労働時間制度に関する研究会報告書」に基づいて執筆されたものであり、まだこの内容で法改正が行なわれることが決定したということではありません。しかし、非常に大きな制度改革が提言されていますので、その内容について簡単にご紹介することにしましょう。
[現状認識]
□労働者の健康確保を図る観点から、連続した日数で、確実にまとまった日数の休暇を取得させることがすべての労働者にとって、ますます重要となっている。
□年休取得のイニシアティブを労働者の自由な時季指定に委ねてきたが、実際の年休取得率をみると、50%以下の水準で推移しており、このシステム自体が限界に来ていると考えられる。


[年休取得率向上のための方策]
□年休のうち一定日数につき、使用者が労働者の希望を踏まえて、あらかじめ具体的な取得日を決定することにより、確実に取得させることを義務付けるという手法について検討を進める必要がある。
□現行の計画的付与制度の活用促進を図る必要がある。
□1週間程度以上の連続休暇を計画的に取得することを義務付ける仕組みや、年休取得率の低い者に計画的に取得させるための方策(例えば、未消化年休の取得計画を作成することを使用者に義務付けるなど)を検討する必要がある。
□それぞれの職場において、月ごとにすべての労働者の年休取得予定日を調整し、周知するなどにより労使当事者の意識啓発を行うことや、年休の取得促進策について話し合うことを義務付けるといった方策が考えられる。
□通院や急に子供の送り迎えや親の介護が必要になった場合など、臨時的または突発的な用務のために、労使合意に基づき年休の時間単位による取得を認めることも考えられる。
□労働者が退職の申し出をしたような場合において、実態として業務の引継ぎ等のため、年休が消化できないまま退職するケースが見られる。こうした場合の労働者の不利益を避けるため、未消化年休に係る年休手当請求権を退職時に生産する制度を設けることも考えられるのではないか。


 概ね、以上のような内容になっています。今後の法制化に向けた議論に注目しましょう。


(大津章敬)