介護休業と深夜業制限、勤務時間短縮等措置
先週は介護休業についての概要及び法改正点についてご紹介させていただきました。本日は、①深夜業の制限、②勤務時間短縮等の措置、についてご説明したいと思います。
1.家族介護を行う労働者の深夜業の制限
・事業主は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者が、その対象家族を介護するために請求した場合に、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、深夜に労働させてはなりません。深夜業の制限は、あらかじめ制度が導入され、就業規則などに記載されるべきものです。
●請求できない労働者
1)継続雇用期間が1年未満の労働者
2)「深夜にその対象家族を常態として介護できる同居の家族」がいる労働者
・上記の家族とは、次の①~④の全てに該当する者をいいます。
①16歳以上の同居の家族であること。
②深夜に就業していないこと。(深夜の就業日数が1か月に3日以下の場合を含む。)
③負傷、疾病等により対象家族の介護が困難な状態でないこと。
④6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産予定でなく、又は産後8週間以内でないこと。
3)その他請求できない合理的な理由があると認められる労働者
・次の①または②のいずれかの場合をいいます。
①1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
②所定労働時間の全部が深夜にある労働者
●請求時期・回数
・制限の請求は、1回につき、1か月以上6か月以内の期間で、開始日・終了日を明らかにして、開始日の1か月前までにしなければなりません。なお、この請求は何回もすることができます。
●制限期間の終了
・深夜業の制限期間は、労働者の意思に係わらず、次の場合に終了します。
1)対象家族を介護しないこととなった場合
・労働者はその旨を事業主に通知しなければなりません。
(具体例)
①対象家族の死亡
②離婚、婚姻の取消、離縁等による対象家族との親族関係の消滅
③労働者が負傷、疾病等により、制限を終了する日までの間、対象家族を介護できない状態になったこと
2)深夜業の制限を受けている労働者について産前産後休業、育児休業又は介護休業が始まった場合
※深夜業の制限の開始前に対象家族を介護しないこととなった場合には、深夜業の制限の請求はされなかったこととなります。
●請求方法
・請求は、次の事項を記載した書面を事業主に提出して行わなければなりません。
1)請求年月日
2)労働者の氏名
3)対象家族の氏名及び労働者との続柄
4)対象家族が祖父母、兄弟姉妹又は孫である場合は、労働者がその対象家族と同居し、かつ、扶養していること
5)対象家族が要介護状態にあること
6)制限開始の日及び制限終了の日
7)深夜にその対象家族を常態として介護できる同居の家族がいないこと
※事業主は、労働者に対して請求にかかる対象家族が要介護状態にあること等を証明する書類の提出を求めることができます。
●その他
・次の①~④の事項は、育児を行う労働者の深夜業の制限の場合と同様です。
①期間を定めて雇用されるものも対象となること
②事業の正常な運営を妨げるか否かは客観的に判断されること
③所定外労働の延長としての深夜業の場合にも請求できること
④請求の仕方の具体例、指針に留意すること等
2.対象家族の介護のための勤務時間の短縮等の措置
・事業主は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者について、就業しつつ対象家族の介護を行うことを容易にする措置として、一の要介護状態について93日以上の期間における勤務時間の短縮等の措置を講じなければなりません。
●措置の対象者
・日々雇い入れられる者は対象となりませんが、期間を定めて雇用される者は対象となります。
●措置の方法
・労働者が就業しつつ要介護状態にある対象家族を介護することを容易にする措置は、次のいずれかの方法により講じなければなりません。
1)短時間勤務の制度
①1日の所定労働時時間を短縮する制度
②週又は月の所定労働日数を短縮する制度(隔日勤務や特定曜日のみの勤務等の制度)
③労働者が個々に勤務しない日又は時間を請求することを認める制度
2)フレックスタイム制
3)始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
4)労働者が利用する介護サービスの費用の助成その他これに準ずる制度
事業主は1)~4)の少なくとも1つを講ずれば足り、労働者の求めの都度これに応じた措置を講ずることまで義務づけられているわけではありませんが、可能な限り労働者の選択肢を広げるよう工夫することが望まれます。
●措置の注意事項
・これらの措置を講じた場合、その日数を介護休業等日数に参入するのであれば、そのことや措置を講じる期間の初日を労働者に明示することが望まれます。
労働者が介護休業等のできる残りの日数が減ることを認識していなかった場合や、勤務時間の短縮等の措置を利用した日数がはっきりせず、同じ対象家族のために今後取得できる介護休業等の日数が不明確な場合は、勤務時間の短縮等の措置を講じた日数は介護休業等日数に算入しないことになりますので注意してください。
●解雇その他不利益な取扱いの禁止
・労働者がこれらの措置の適用を申し出たこと、または措置の適用を受けたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません。またこれらの措置は、労働者が希望する期間を超えてその意に反して適用されるものであってはなりません。