人は見た目が9割

  表題の「人は見た目が9割」は最近のベストセラーで竹内一郎さんの著作である。言ってみれば、非言語コミュニケーションの効用を説いた心理学の実務書に該当する。米国の心理学者が発表した「メラビアンの法則」を基礎に言語以外で人に伝わるものは何かを語っている。法則によると、人が相手から受け取る情報は「話す言葉の内容」「見た目、身だしなみ、仕草、表情」「声の高低、大きさ・テンポ」の3つに分類され、それぞれが相手に伝達する度合いは、「7:38:55」だそうだ。後者の2つが「見た目」になるのだそうだ。


 会計事務所の業界も個人事業者や経営者個人の確定申告の本番をむかえる。 申告書を作成するのに必要な資料をお客様にお願いしたり、作成された申告書を説明したり、限られた期間で相当の仕事量をこなさねばならない。お客様にとっては年に一度のことであり、しかも、自身のことしか関心がない。しかし、会計事務所の担当者は多くのお客様の対応を迫られる。


 毎年のことであるが、ここで、担当者によって資料集めの依頼や、お客様に確認しなければならない事項について「お客様を積極的な協力者」に出来る担当者と、そうでない担当者に分かれる光景を目にする。担当者の知識の程度、経験の長さ等が同じであっても、成果が異なってくるのである。


 専門家の仕事であるから、本来なら「話す言葉の内容」で相手に協力、理解を得られるはずであるが、「差」が生じるのは、お客様への訴求する態度、熱意気迫を感じ取ってもらえるか、逆に沈着冷静な態度で接することで納得感を得るか、笑顔でお願い口調で接して自身の味方になってもらうか・・でないかと考える。


 お客様からすれば自身のこととは言え、大事な申告を依頼するのだから、担当する人の「人間力」で対応は変わってくる。大変忙しい時期に「私だけ無理は言ってはいけない」と感じてもらえるかどうか・・。「見た目が9割」の理論は当っているような気がする。


(影山勝行)