ダイバーシティマネジメントの先端をいく医療機関

 企業の人事担当者から「人材が確保できない」という声をよく耳にします。特に愛知県は好況が背景にあるためか、そういった声を聞く機会が多く、正社員のみならずパート社員の確保も困難に陥り、人材の確保難から店舗を閉鎖せざるを得なかったという小売業もあるほどです。2007年から始まる団塊の世代の大量退職は、こういった労働力不足時代の到来とされていますが、これについて具体的な対策を講じている企業は少数ではないかと思われます。


 ところが、既に何年も前から労働力が不足し、現実的に事業縮小を余儀なくされている事業所が相次ぐなど、将来の労働力不足社会の縮図となっている業界があります。それは、医療機関であり、特にクリニック(診療所)はその傾向が強いといえます。クリニックでは、看護師や助産師といった有資格者を確保しなければ事業を行うことができませんが、そういった人材は地域にそれほど多く存在するわけではありません。また労働条件面でも、公的病院や大病院の方が遥かに良いことから、地域にもよりますが、思うように人材を確保できないというのが実態です。


 そのため、年齢を問わない採用や障害者や母子家庭の方の雇用に対して積極的になっているクリニックが多く、また保育所の設置や柔軟な勤務体制等を設けるなどの対応を行っている事例が多く見られます。こういった柔軟かつ前向きな雇用対策を講じているクリニックほど優秀な人材が集まっており、その施策次第で経営が大きく左右されるということも珍しくありません。


 そういった意味では、医療機関はダイバーシティマネジメントの最先端を走っており、様々な取り組みについては参考になる部分も多くあるかと思います。そこで次回はクリニックが採っている具体的な人材確保策についてご紹介致します。
 
(服部英治)