定年退職後の継続雇用における年次有給休暇の取扱い
平成18年4月1日に施行される改正高年齢者雇用安定法については、当blogでも継続的に取り上げています。実務を行っている立場としては、中小企業の意識も徐々に高まりつつあり、ここに来て、具体的な対策が進められているように感じます。今回は、この改正に関連し、継続雇用における年次有給休暇(以下「年休」という)の取り扱いについて考えてみることにします。
■質問
平成18年6月30日に60歳での定年退職を迎える社員がいます。当社では、高年齢者雇用安定法改正の対応として継続雇用制度を導入しており、この社員についても定年の翌日から1年契約で継続雇用をすることが決まっています。この社員は現状、年休が40日あり、定年退職日までにすべて消化することは難しい状態です。恐らく10日を余らせて6月30日を迎えることになりそうですが、この残余日数について継続雇用開始後どのように取り扱えば良いのでしょうか?
■回答
結論から申し上げますと、年休についても定年前と継続して考える必要があります。従って、継続雇用開始時には定年退職時に消化できなかった年休を取得することができます。年休は、労働基準法第39条に「雇入れの日から起算して6ヶ月継続勤務し全労働日の8割以上出勤」した者に対し付与されるとあります。今回のケースでは「継続勤務」の解釈に疑問が生じますが、これは契約ではなく実態に基づいて判断されます。定年退職後も実態として継続的に勤務していますので、定年退職時に消化できなかった年休については、継続勤務後に引き続き取得できることとなります。なお、勤続年数を判断する際にも、同様の考え方を用いるため、新たに年休を付与する際には、継続雇用後からではなく定年退職以前からの勤続年数に基づき判断することになります。
■まとめ
今回の法改正では、継続雇用後の労働時間や賃金設定について、法的な制限は設けられていません。しかし、上記の年休のようにルールを確認し、検討を進めておくべき事項はあります。法改正前に実務的な取扱をまとめておく必要があるでしょう。
■参考リンク
改正高齢法の施行に向けた企業の取組状況について~雇用確保措置導入見込み企業は300人以上規模で98%~(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/01/h0127-6.html
(宮武貴美)