継続雇用制度協定における健康要件策定のポイント
改正高年齢者雇用安定法の施行が迫ってきました。多くの企業では、その選定基準に関する協定書の作成の真っ只中ではないでしょうか。継続雇用の対象者の選定基準を定める場合、過去の人事考課結果や懲戒歴、出勤率などの基準を設定することが多いと思いますが、同時に社員の健康状態に関する基準を設けることが通常です。今回はその基準を定める際に押さえなければならないポイントについてお話しましょう。
厚生労働省の「継続雇用制度の対象者に係る基準事例集」における健康の基準例としては以下のような基準が例として挙げられています。
・直近の健康診断の結果、業務遂行に問題がないこと
・60歳以降に従事する業務を遂行する上で支障がないと判断されること
・定年退職○年前の時点で、体力について適切と認められる者
・体力的に勤務継続可能である者
・勤務に支障がない健康状態にある者
非常に一般的な規定ですが、このような記述の仕方では、いざ基準を適用しようとする際に問題となりがちです。というのも、判断における具体的な基準やプロセスに関する定めがなされていないため、本人は「業務にあたり健康上の問題はない」、会社は「支障がある」といったように、労使間でその判断が分かれ、トラブルになりやすいのです。
また健康状態に問題がないことを証明するため、本人から診断書を提出させるような取り扱いも多く見られますが、この規定についても注意が必要です。診断書に「就業可能」とあった場合、その診断書の取り扱いについて明確に示しておかなければ、会社としてはその健康状態を理由として継続雇用の拒否を行なうことができなくなってしまう可能性があります。実務上、医師の診断書の傾向を見ていると、若干就業に問題があるような場合でも本人の希望に基づき就業可能と診断したりすることが少なくありません。特にメンタル上の問題を抱える者の場合、周囲から見れば明らかに就業は無理というような状況であったとしても、本人の就業可能との申告に基づき、リハビリテーションの一環として就業可能とする診断書が作成されることが少なからずあるようです。
よって、このような健康状態に関する基準を定める場合には、最終的に誰が就業の可否の判断を行うのかということを明確に定めておく必要があるのです。これは休職制度における復職の規定も同様なのですが、基本的には産業医など、会社指定の医師の診断を受診させ、その結果を元に会社と診断医が協議し、その就業可否を決定するとしておく、つまり就業可否の判断における決定プロセスを明確にしておくことが実務上、ポイントとなります。もっとも会社がその可否を判断するというような規定では、判断における会社の恣意性が問題とされる可能性がありますので、注意が必要です。
□継続雇用制度協定における健康要件の策定例
身体、精神が定年前と同様に就業できる者。就業可否の判断にあたっては、対象者に会社の指定する医師の診断を受診させ、その医師の診断結果をふまえて、その判断を行う。
□参考ページ
厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正のお知らせ」
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/kourei2/
(大津章敬)
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