人事制度を悪者にしていないか

 「当社の社員に元気がないのは、人事制度に問題があるからだ。賃金にメリハリをつけることで社員を活性化したい」


 世間ではこのような話をよく耳にします。しかし、これまでの経験から言えば、社員に元気がないという原因の多くは、人事制度以外の点にあると実感しています。どこの世界でも○○制度という「箱モノ」は何かと悪者扱いされやすいですが、特に人事制度は、その効果が良くも悪くも見え難いことから、特に悪者にされやすい傾向にあるように思います。企業不祥事が発生した際の「トカゲの尻尾切り」ではありませんが、本質的な問題の追及と解決を行わずして、人事制度だけを見直したとしても、企業の体質改善には繋がらないと考えることが求められています。


 もしみなさんの会社で人事制度が悪者になった際には、以下の質問をして頂きたいと思います。
「当社において、誰も積極的に触れようとしないが、以前から水面下で語られている最悪の問題は何であろうか?」


 このように考えてみると、その本質的な問題は人事制度ではなく、それ以前の基本的な事項が抽出されることがほとんどではないでしょうか。例えば、「経営陣と社員の間の信頼関係ができていない」であるとか、「会社の方針が明確でない」、「上司と部下のコミュニケーションが取れていない」というような内容が典型的な問題として抽出されます。こうした本質的な課題に踏み込まず、表面的に人事制度を見直したとしても、その効果は極めて限定的なものになってしまいます。是非、表面的な対策に終始せず、本質的な議論に踏み込んで、自社の活性化を進めて頂きたいと願っています。


(大津章敬)


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