「監視・断続的労働従事者」、「宿日直勤務者」の労働時間管理

 本日は所轄労働基準監督署長の許可を受けることにより、労働時間、休憩、休日の規定が適用除外となる「監視・断続的労働従事者」及び「宿日直勤務者」について、解説します。


 監視・断続的労働及び宿日直労働は、通常の労働と比べて労働密度が希薄で、身体の疲労や精神の緊張も少ないとみなされることから、所轄労働基準監督署長の許可を受けることにより、労働基準法の労働時間、休憩、休日の規定は適用除外になります(労働基準法41条3号)。


1.監視・断続的労働従事者


 「監視に従事する者」とは原則として、一定部署にあって監視することを本来の業務とし、常態として心身の緊張度の少ない者をいいます。具体的には、門番、守衛、水路番、メーター監視等のような者が該当とされ、交通関係の監視、犯罪人の監視等は精神的緊張度が高いとの理由から認められていません。


 一方、「断続的労働に従事する者」とは、通常は業務閑散であり、労働時間中において手待時間が多く、実際に作業をする時間が少ない者をいいます。実作業時間合計より手待時間合計が多いことが第一要件とされていますが、実働時間の合計が8時間を越えるものや、その業務が危険なものは該当しないと考えられています。具体的には、旅館の客室係、タクシー運転手、ボイラー技師などが認められておらず、小学校の用務員、高級職員専用乗用車運転手、寄宿舎の寮母等は認められています。


2.宿日直勤務者


 宿日直勤務とは、一般的に医療機関における定期巡回や文書の受付、電話連絡の処理または非常事態に備えての待機業務などをいいます。1の監視・断続的労働との大きな違いは、本来業務に従事しつつ、同じ者が時間外や休日に宿日直勤務を行う点です。従って、本来の業務の延長と考えられるような業務を処理するものは、例え宿日直勤務といっても許可の対象となりません。ただし、医師・看護婦の定時巡回や定時検温、検脈などは、本来の業務と同内容であっても、特定の軽易な業務として、宿日直勤務中に処理しても差し支えないとされています。ただし、例えば医師が宿直中に救急患者の診療等の本来の業務に従事したような場合には時間外労働になりますので、宿直手当とは別に割増賃金を支払う必要があります。また、度々、本来の業務に従事することが見込まれる場合は、許可は取り消されることになります。


 その他の許可条件として、宿直勤務は週1回、日直勤務については月1回が限度回数とされ、手当の最低額は、宿日直勤務労働者に支払われている賃金の1人1日平均額の3分の1以上とされています。また、宿直勤務については、相当の睡眠設備の設置が必要とされています。


 以上が、監視・断続的労働、又は宿日直勤務についての概要となります。これらは、実態が該当していたとしても、所轄労働基準監督署長の許可を受けていない場合には適用されず、労働時間等の法規制を受けることに注意する必要があります。また、許可を受けた場合でも年次有給休暇の付与、深夜業の割増賃金の支払に関する規定の適用は除外されません。



□参照条文
労働基準法第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
 この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
1.別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者
2.事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
3.監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの


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