業務の結果だけではなく、そのプロセスも評価する

 先日、日経ビジネスアソシエを手に取りました、その中に「部下の仕事を最終的な結果だけでなく、そのプロセスも含めて評価する上司」が「部下の仕事を、最終的な結果だけで評価し、そのプロセスを問わない上司」よりも部下に好意を持たれているという記事を見かけました。


 その記事によれば、回答者全体を100%とした場合、プロセスも含めて評価する上司に好意を持つと答えた者が93.9%、結果だけで評価する上司に好意を持つと答えた者が6.1%と、圧倒的にプロセス評価支持派が多いという結果になっており、ここまでの差があることには、正直驚きました。


 成果主義人事制度の失敗の要因の1つとして、短期的な成果を中心に評価を行ったために、単年度で結果が出ない中長期的な課題に対する取り組みが弱くなり、短期的に結果が見えやすい目標ばかりが設定され、継続的な企業の成長を阻害したという反省が叫ばれています。よって結果だけではなく、結果の先行指標たるプロセスも評価に加えようとする動きが強まっていますが、プロセス評価を実施する場合には、具体的にどのような考えに基づき、どう行動したのかという業務の質の評価を行う必要があります。これは単純に結果の達成度を評価する場合に比べると、非常に煩雑で、手間が掛かるものになります。


 更には、その評価理由について論理的にまとめ、面談を通じ、部下にフィードバックする必要がありますが、現実的にはこれも評価者に対して、一定のトレーニングを行わなければ、その趣旨が十分に伝わらず、逆に部下のモチベーションを下げてしまう危険性があります。人事考課者訓練といえば、かつては「人事評価の視点や基準の統一」に置かれていましたが、最近は「部下に対する説明能力の向上」が最大のポイントとなっています。


 人事評価は、昇給や賞与を決定するために行うものではなく、労使コミュニケーションを通じ、日頃の行動および成果の承認を行い、課題や今後の方向性を共有することに大きな価値があります。その中でも特にプロセス評価は、成果の獲得に向け、どのように行動するのかという議論を通じ、成果の実現可能性を高めるために行うものであると考えたいものです。


(志治英樹)


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