[福利厚生]保存有給休暇制度の活用

 春闘における労使交渉も本格化している時期かと思いますが、近年の春闘においては賃上げの交渉に止まらず、より安心して働くことができる労働環境の構築を目指し、様々な要求が出されることが多くなっています。そんな中で頻繁に耳にするのが「保存有給休暇制度」の導入です。本日はこの制度の概要と運用について簡単に解説したいと思います。


 保存有給休暇制度とは、本来であれば消滅してしまう年次有給休暇(以下「年休」)を一定の日数まで保存し、私傷病などによる長期欠勤の際に取得できるようにする制度のことをいいます。


 労働基準法では、入社し6ヶ月経過すると10日の年休が付与され、その後、勤続年数が1年増すごとにそれに対応した日数が毎年、付与されることになっています。また当年度中に取得できなかった場合には翌年度に限り、持ち越すことができることになっています。つまり入社して1年半を経過した時点で、前年度に1日も年休を取得していない場合には前年度分10日+今年度分11日の合計21日の休暇が与えられることになります。


 一方、年休は付与から2年を経過するとその取得ができなくなり、権利が消滅してしまうため、もし仮に同じ社員が翌年も1日の年休も取得しなかった場合には、初年度の10日の権利は消滅し、前年度分11日+当年度分12日の合計23日の年休が取得できることになるのです。保存有給休暇制度は、この消滅してしまう年休を積み立てておき、私傷病などによる長期欠勤の際など、特定の事由による休業の場合に限り、取得することを認めるという制度です。


 具体的な運用においては、1)保存有給休暇としてストックできる年休の上限日数、2)保存有給休暇を取得できる事由、3)年次有給休暇との兼ね合い(保存有給休暇は、法定の年休をすべて取得した後に初めて使用できるなど)、4)出勤率計算などにおける保存有給休暇取得期間の取扱い、5)保存有給休暇取得期間と休職の期間との関係などを定めることになります。


 社員にとっては、病気や怪我で長期欠勤しなければならない状況になっても一定の範囲で有給休暇が認められるのは、非常に大きな安心感に繋がります。現実的にはそれほど頻繁に適用者が出るような制度でもありませんので、福利厚生制度の見直しを行われる場合には、検討されてみてはいかがでしょうか?


(大津章敬)


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