国民年金の学生納付特例制度

 先日、社会保険庁から「平成16年公的年金加入状況等調査結果 速報のポイント」が発表されました。この調査結果には公的年金について、その加入状況の他、制度に関する周知状況等が記載されています。この中で学生納付特例制度について比較的認知度があまり高くない(学生納付特例制度について知っている割合は、第3号被保険者で63.6%、第2号被保険者で61.5%、第1号被保険者で61.3%。中でも第1号未加入者では33.2%と非常に低い認知率)という結果が出ていました。そこで本日はこの制度について取り上げてみましょう。


 この制度は本来、保険料を納付すべき学生に対し、在学中の保険料納付を猶予するものです。日本国内に住むすべての人は、20歳になったときから国民年金の被保険者となりますが、近年の大学進学率を見てもわかるように、20歳では学生であるケースも多く、所得の低さから保険料の納付が困難なケースも見られます。そこで、本人の所得が一定以下の学生については、申請に基づき保険料納付が猶予されることになっています。


 この制度を活用し、保険料が猶予された場合のメリットを以下にまとめてみましょう。
■メリット
老齢基礎年金の受給資格期間に算入される。
 老齢基礎年金を受け取るためには、原則として保険料の納付済期間等が25年以上必要です。この制度の承認を受けた期間は、この25年以上という老齢基礎年金の受給資格期間に含まれることとなります。ただし、老齢基礎年金の額の計算の対象となる期間には含まれません。


障害基礎年金・遺族基礎年金の支給判断において納付済期間と同様の取り扱いとなる。
 障害や死亡といった不慮の事態が生じた場合に、(1)その事故が発生した月の前々月までに保険料を滞納した期間が被保険者期間の3分の1以上ない場合、または(2)その事故が発生した月の前々月までの1年間に保険料の未納がない場合には、障害基礎年金や遺族基礎年金が支給されますが、この制度の承認を受けている期間は、保険料納付済期間と同様に当該要件の対象期間になります。


■注意すべき点
保険料の追納を行う必要性がある。
 申請により猶予が認められた期間については、猶予後10年間、保険料を納付(追納)することができる仕組みになっています。この期間内に納付しない場合は、将来、老齢基礎年金の額の計算の対象となる期間には含まれまないことになるため、満額の老齢基礎年金が受給できないことがあります。なお、猶予後2年以上経過後に追納する場合は、猶予されていたときの保険料に、一定の加算額が加わります。


申請は毎年必要である。
 通常の学校では複数年通学することになりますが、この制度は本人の所得を基準としているため、毎年申請することが必要です。申請が遅れると、申請日前に生じた不慮の事故や病気による障害について、障害基礎年金を受け取ることができない場合があります。


 以上、この制度のメリットおよび注意点をまとめてみました。



参考リンク
社会保険庁「平成16年公的年金加入状況等調査結果 速報のポイント」[pdf]
http://www.sia.go.jp/infom/press/houdou/2006/h060308.pdf
学生納付特例制度~社会保険庁
http://www.sia.go.jp/top/gozonji/gozonji01.htm


(宮武貴美)


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