パートタイマーにも定期健康診断を受診させる必要があるか

 最近、雇用形態の多様化という言葉をよく耳にするようになりました。パートタイマーを初めとしたいわゆる非正規社員の増加は著しいものがあります。そこで今回は、パートタイマーにも定期健康診断を受診させる必要があるか(定期健康診断の受診労働者の範囲)について取り上げてみましょう。
■質問
 当社では社員は5名、パートタイマー・アルバイト10名で業務を行っています。社員には毎年1回の健康診断を実施していますが、パートタイマー・アルバイトについてはこれまで実施していません。先日、パートタイマーの方から「私も健康診断を受けたい」という申し出がありました。パートタイマーの方に対しても実施する必要があるのですか?


■回答
【結論】
 一定の基準満たすパートタイマーについては健康診断を実施する必要があります。


【解説】
 まず定期健康診断は、労働安全衛生法第66条および労働安全衛生規則第44条でその実施に関する事項が定められています。ここでは、「常時使用する労働者(第45条第1項に規定する労働者を除く。)に対し」て行わなければならないと規定されていますが、具体的な労働者の範囲については、法律に明確な定めがあるわけではありません。その上で「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について」(平成5年12月1日基発第663号)という通達が、実施すべき労働者の範囲を以下のように明確に定めています。



 1週間の所定労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の労働時間の4分の3以上であり、かつ、雇用期間がのいづれかに該当する労働者については健康診断を実施する必要があります。
雇用期間の定めのない者
雇用期間の定めはあるが、契約の更新により1年(※)以上使用される予定の者
雇用期間の定めはあるが、契約の更新により1年(※)以上引き続き使用されている者
  ※特定業務従事者は6ヵ月


 なお、1週間の所定労働時間が2分の1以上の労働者については実施することが望ましいとされています。


 従って、御社でも上記の範囲に該当するパートタイマー・アルバイトについては定期健康診断を実施する必要があります。この範囲は社会保険に加入すべき範囲と似通っており、実施対象者選定の際には参考にできるかと思います。


■まとめ
 定期健康診断の費用については、事業主負担とされており、受診者が増加することで費用の負担も重くならざるを得ません。しかしながら、「健康であるからこそ業務の遂行ができるのだ」という考えのもと、対象者全員の健康診断実施に取り組む必要があるといえるでしょう。





参考条文
労働安全衛生法 第66条 第1項
 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない。


労働安全衛生規則 第44条 第1項
 事業者は、常時使用する労働者(第45条第1項に規定する労働者を除く。)に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
1 既往歴及び業務歴の調査
2 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3 身長、体重、視力及び聴力の検査
4 胸部エックス線検査及び喀痰検査
5 血圧の測定
6 貧血検査
7 肝機能検査
8 血中脂質検査
9 血糖検査
10 尿検査
11 心電図検査





 参考リンク
短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について(平成15年10月1日改正基発第663号)[pdf]~厚生労働省[pdf]
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/151010-a.pdf
短時間労働者についても健康診断が必要です。~愛知労働局
http://www.aichi-rodo.go.jp/topics/docs/03-08-28-2.html


(宮武貴美)


当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。