注目を浴びる短時間正社員制度

 先日、厚生労働省から「短時間正社員制度」の導入マニュアルが公開され、また総務省でも「多様な働き方を支援 短時間正社員制度」という映像による広報を行われているなど、各官庁では「短時間正社員制度」の積極的な普及を目指しています。この背景には、非正規従業員の増加、育児・介護問題への対策や自己啓発促進、そして2007年問題による人材確保難への対策があると考えられますが、今回は総務省が「ピックアップ」として取り上げている情報をもとに、この制度の概要について見てみることにしましょう。


■高まる短時間正社員制度導入への期待
 近年、少子高齢化が急速に進み、労働力人口減少の問題が深刻化することが予想されています。また、就業意識の多様化も見られる中、フルタイム一辺倒の働き方を続けることは、労働者の士気の低下にも繋がり、企業に悪影響を及ぼしかねません。現在、これらの問題解決の鍵となる、企業の「短時間正社員制度」導入への期待が高まっています。


■フルタイム正社員に比べ労働時間の短い短時間正社員
 短時間正社員は、フルタイム正社員より一週間の所定労働時間が短い正社員です。労働時間が短い分、仕事における責任やキャリアアップについてはフルタイム正社員とは異なる場合もありますが、いわゆる非正規社員とは異なり、企業における正規の雇用形態として位置づけられるため、安定した雇用が望めます。短時間正社員には、フルタイム正社員が一定期間だけ短時間で働き、いずれはフルタイム正社員に復帰する場合と、正社員が恒常的に短時間で働く場合とがあります。


■企業側にも労働者にもあるメリット
 短時間正社員制度には、労働者と企業のそれぞれにメリットがあります。労働者が正社員として短時間で働くことができれば、これまでさまざまな理由で就業が制約されていた人にとっては働く機会が広がります。また、就業の継続を望みつつも育児や介護、自己啓発のための時間がないと悩まれていた方にとっては、正社員として働きながら家庭や勉強などとの両立を図ることが可能になります。企業としても、有能な人材の発掘・職場への定着が容易となり、企業の競争力を高めることができます。また、人事管理、労働時間管理、賃金管理、業務の進め方などを見直すことにより、仕事の効率性を高めることが可能となります。


■厚生労働省は制度導入を支援します
 現在、短時間正社員制度を利用している企業は決して多いとは言えません。また制度導入にあたり、キャリア形成や処遇面での対応など、業務運営・人事管理の面でクリアしなくてはならない課題があることも事実です。そこで、短時間正社員制度に興味はあるが具体的にどうやって導入すればよいのか分からない、どのような手順を踏めばよいのか分からないという企業のために、厚生労働省では、短時間正社員制度を導入する際のマニュアルをまとめています。平成18年3月中にも都道府県の労働局などを通じて、企業に提供していくとともに、ポスターなどによる啓発活動も展開される予定になっています。また平成18年度からはさらに、短時間正社員制度を導入する企業に対するサポートが強化されます。


 実際の厚生労働省のマニュアルでは、制度導入の際の課題が様々な観点から取り上げられ、その解決策が記載されています。これまでは、育児のためにやむを得ず退職するという労働者も少なくない現状がありました。法律として施行するのではなく、よりよい労使関係を築くためにはこのような制度の推進も重要になっています。



参考リンク
厚生労働省「ライフスタイルに合わせた働き方 「短時間正社員制度」を考えませんか?」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/03/tp0308-2.html
総務省「ピックアップ(平成17年3月) 多様な働き方を支援 短時間正社員制度」
http://www.gov-online.go.jp/pickup/2006_03/pickup_d.html


(宮武貴美)


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