「HOW」ではなく「WHY」

 2006年2月の日経新聞の「私の履歴書」は、ジャック・二クラウス氏で、好評を得ていたようです。今回は、その第21回、「名コーチの条件」と題された2006年2月22日の記事に注目したいと思います。


 氏は名コーチの条件として、「よいゴルフコーチの条件とは何だろう。私なら、こう定義する。すなわち、生徒に「どのようにすべきか(How)」ではなく「なぜそうなるのか(Why)」を教えられること」と記しています。


 これは、今どの企業も抱えている「人材育成」の部分で重要なヒントとなる言葉ではないでしょうか。トヨタの強さの理由を記した図書等にも記されている通り、「なぜ」「なぜ」の繰り返しは重要で、すべての仕事の中でこのような問いかけの気持ちがあることが、さまざまな改善に結びつき、「カイゼン」「改革」のベースとなります。


 一方、幹部の対応としても、部下が相談をしてきた場合には、すぐに「こうだ」と回答・指示するのではなく、「君はどう考えるのか、どうすることがベターと思うか」という質問を重ね、部下に考える機会を与えながら答えを導くということも重要です。


 ある有能なラグビー部の監督が、ラガーに対し、練習一つ一つについて「なぜするのか」ということを説明指導しているという話を聞いたことがあります。これにより、ラガー達はその練習の持つ意味を理解し、より効果的に練習に励むことができます。


 このようにHowではなくWhyということが、社風として企業に定着するならば、社員に知恵が生まれ、企業間競争において強い社風となって生きてくるのではないでしょうか。


 さらに同記事で氏は、「弱肉強食に等しいプロの世界において、ゴルファー達は皆、精神的に不安定になるものだ。そんな時、最も重要なのは心を落ち着かせることだ。そのために必要なもの。それは目の前の相手を思いやり、その苦悩を理解し、勇気付けてくれる存在である。プレーヤーから見て、理想のコーチとはそういうものだと思う。」と述べています。


 企業のトップやリーダーについて、今、スキル以前に社員の心の問題が企業の問題として掲げられています。氏の記事は、この問題解決の糸口となるのではないでしょうか。


(佐藤澄男)


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