かかりつけ医の健康診断を会社実施の定期健康診断の代わりにできるか
新入社員が入社する4月は健康診断を実施する企業もたくさんあるようです。そこで今回は、会社で実施する健康診断に関する話題を取り上げることにしましょう。
■質問
当社では毎年1回、定期健康診断を実施しています。今年も昨年同様、社員に健康診断の案内をしたところ、「私はかかりつけの病院で健康診断を行っているから会社が実施するものには参加したくない」との申し出がありました。この社員についてどのように扱えばよいでしょうか?
■回答
【結論】
社員が希望する場合、かかりつけの病院等で実施した健康診断結果の証明を提出させることで、それを会社で行う健康診断の代わりとすることができます。
【解説】
労働者が受ける医師による健康診断は、労働安全衛生法(以下、「安衛法」という)第66条第1項において事業主に対する義務として課されています。そして、同条第5項で労働者が事業者の指定する医師を希望しない場合は、他の医師等が実施するものでも、結果を証明する書面を提出することで問題ないとしています。
今回のケースでは、労働者本人が「会社が実施するものには参加したくない」という状況を考慮すると、以下の対応が必要となるでしょう。
他の医師等が行う健康診断項目が法律に定められている項目を網羅しているかを確認する。
労働者本人に健康診断結果の書面を提出させる。
で提出された健康診断結果について医師または歯科医師の意見を聴く。
■まとめ
近年の健康意識の高まりにより、社員からのこのような申し出は時々あるようです。しかしながら、受診時期の管理に関する問題、結果書類の取り扱いの問題、受診費用の負担に関する問題など、実務に関する負担は決して少なくありません。また、経年変化を管理している会社も多く、健康診断結果の管理という観点からも対象者全員の受診が望ましいでしょう。
参考リンク
労働安全衛生法 第66条第1項
事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない。
労働安全衛生法 第66条第5項
労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。
(宮武貴美)
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