大企業と中小企業で異なる「社員に求める社会人基礎力」の傾向

 先日、経済産業省より「社会人基礎力に関する緊急調査」の結果が発表されました。これは東証一部上場企業と中堅・中小企業を対象に2月に実施したアンケートの集計で、企業がどのような能力要素を重視しているかを調査したもの。この結果が抜群に面白いものになっていますので、今回ご紹介してみましょう。


 そもそも社会人基礎力とは、「職場や地域社会の中で多様な人々とともに仕事を行っていく上で必要な基礎的な能力」のことであり、「考え抜く力(シンキング)~疑問を持ち、考え抜く力」、「前に踏み出す力(アクション)~一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力」、「チームで働く力(チームワーク)~多様な人とともに、目標に向けて協力する力」という3つの能力から構成されています。この3つの能力が更に12の能力要素に分解され、調査に利用されているのですが、そのポイントは以下のようになっています。



約9割の企業が、新卒社員の採用プロセスや入社後の人材育成において「社会人基礎力」を重視している。
東証一部上場企業においては、約7割の企業が独自の言葉を用いて若者に対して「求める人材像」を表現しているのに対し、中堅・中小企業では約3割にとどまっている。
企業の「求める人材像」においては東証一部上場企業においては「前に踏み出す力」を、中堅・中小企業においては「チームで働く力」を重視する企業が多く見られる。
企業が求める人材像について、企業規模に関わらず、「主体性」、「実行力」、「創造力」が高い割合で求められている。
大企業では、「働きかけ力」、「課題発見力」、「発信力」、「柔軟性」がより高く求められる傾向が見られる。
一方、中小企業では「働きかけ力」や「発信力」、「ストレスコントロール力」などを求める傾向が弱く、「計画力」や「規律性」というより基本的な能力が強く求められている。


 このように大企業と中小企業が求める社員の基礎力には決定的な違いがあることが分かります。これは入社する社員のレベルや企業を取り巻く環境によって大きな影響を受けていると思われますが、このような調査はこれまでなかなか見当たらなかっただけに、非常に興味深いのではないでしょうか。なお人事政策としては、中小企業で「社員に求める人材像」の明確化が遅れているという課題が明らかになりましたが、これは人事管理の基本中の基本ですので、多くの企業で是非取り組んでいただきたいと思います。



参考リンク
経済産業省「社会人基礎力に関する緊急調査」の結果について
http://www.meti.go.jp/press/20060418005/20060418005.html


(大津章敬)


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