会社の望む仕事以外で残業する従業員への対処




 当社従業員の給料は、基本給、職務手当、残業手当で構成されています。ある従業員が、会社の望む仕事以外による残業が長時間に及ぶため、1日当り残業時間として認めるのは2時間までとし、以降はカットしたいと考えています。しかし実際に勤務している以上、残業を2時間まででカットしてしまうのは問題が残る気がします。この従業員に対抗する方法はないでしょうか。


 原則を申し上げますと、懸念されている通り、どのような業務内容であっても残業時間が1分でもあれば残業手当の支払は必要とされます。


 現在は残業について黙認をされているようですが、残業とはあくまでも使用者の指示命令に基づくものです。また、会社の責務として適正な労働時間を把握することが必要です。残業は個人の裁量に任せず、上司の指示で行うよう改善すべきと思われます。


 運用の一例ですが、例えば 「残業申請書」を整備し、残業を行う者は事前に仕事の内容、予定時間を上長に申請するルールとし、上長の許可があった場合にのみ残業を認め、残業手当を支払うといった方法です。
        
 この場合に残業終了予定時刻に達したら、退社を求める必要があります。予定時刻を過ぎてもなお残業をしている場合、労働者の自主的判断で残業をしていることになりますが、黙認されている場合は現状と変わらなくなってしまいます。つまり、予定時間が来たのだからと退社を促す必要があります。


上記以外の方策として、制度に基づく対処の方法も考えられます。以下に一例を述べますが、これは当該従業員の実態に即し、適用対象の可否を慎重に検討する必要があります。


①「管理監督者」としての適用検討
・管理監督者は労働時間、休憩及び休日に関する労働基準法上の規制の対象にならず、割増賃金の支払義務も生じません。しかし、名目だけの管理監督者であり、労働の実態が一般労働者と変わらないのであれば残業手当の支払が必要となります。


②「裁量労働制」の採用検討
・業務の遂行手段や時間配分を労働者の裁量で決定し、使用者からの具体的な指示を受けない者について、一定労働時間を勤務したものとみなす制度です。この場合、適用される業務や範囲、運用にあたっての条件がありますので、注意が必要です。この際には労使委員会の設立等前提条件が必要となってきますのでご注意ください。