健康診断実施後の結果通知と結果保存

 前回は、健康診断後の措置を取り扱いました。今回は、その結果通知と結果保存の取り扱いについて取り上げてみましょう。
■質問
 当社では毎年1回、定期健康診断を実施しています。健康診断結果については、委託している医療機関から会社に直接送付されてきます。受診者には個人結果を渡し、会社としては結果の一覧表をファイルしています。この取り扱いで問題ないでしょうか。


■回答
【結論】
 医療機関から直接健康診断結果を受け取る場合には、労働者からその旨の同意を取っておくべきでしょう。また、保存に際しては、閲覧できる人を決め、厳重な管理をする必要があります。


【解説】
 今回の質問については、以下の3つのポイントがあります。
1.健康診断結果の回収
2.健康診断結果の労働者への通知
3.健康診断結果の会社内部での取り扱い


 この3つのポイントについて、厚生労働省が発表した通達「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項について」(以下、「通達」という)を参考に考えていきます。
1.健康診断結果の回収
 実務的には質問にあるように健康診断結果の取りまとめを会社が行うケースは多く見受けられます。厳密に考えると医療機関から直接健康診断結果を受け取ることは、個人情報保護法の第三者提供に該当します。したがって、会社はあらかじめ健康管理に利用することを労働者に通知し、直接受け取ることの同意を取っておくことが望ましいでしょう。なお、通達では「労働者本人から提出を受けることが望ましい」としています。これについては未提出者への対応や回収の手間など、事務負担が膨大になることが容易に想像されます。各企業で取り扱いを検討し、実施の検討が必要といえるでしょう。


2.健康診断結果の労働者への通知
 健康診断結果は、その内容によっては非常にセンシティブな情報であり、重要な個人情報です。医療機関の配慮があるとは思いますが、受診労働者本人以外が見ることのできない形での通知が必要不可欠です。


3.健康診断結果の会社内部での取り扱い
 これまでは健康診断結果について十分な管理体制が敷かれているといえない会社も多くあったようですが、最近ではその取り扱いについて重視されつつあるようです。通達を確認すると、以下の5項目について規程等として定め、これを労働者に周知するとともに、関係者に当該規程に従って取り扱わせることが望ましいとしています。
(a)健康情報の利用目的に関すること
(b)健康情報に係る安全管理体制に関すること
(c)健康情報を取り扱う者及びその権限並びに取り扱う健康情報の範囲に関すること
(d)健康情報の開示、訂正、追加又は削除の方法(廃棄に関するものを含む)に関すること
(e)健康情報の取扱いに関する苦情の処理に関すること


 従って、この5項目について、就業規則に定めると共に、管理を行う者、閲覧ができる者を限定し、厳重な管理を行う必要があります。実務的には、総務担当の役職者のみが管理し、必要に応じて産業医等の産業保険従事者に閲覧させるという内容が好ましいといえます。また、労働安全衛生法では健康診断結果について、健康診断結果を5年間保存しなければならないとしています。この保存期間もしっかりと管理し、不必要な情報を持ち過ぎないとうことも考える必要があるかも知れません。


■まとめ
 個人情報保護法の施行に伴い、会社で管理する個人情報の取扱いも様々な点で注意が必要になってきました。解説でも書いたとおり、健康診断結果については非常にセンシティブな情報と言えます。これまで、その管理方法までは重視されていなかったようですが、この機会に管理体制全般を見直されることをお勧めいたします。



参考リンク
「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項について」~厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/seisaku/kojin/dl/161029kenkou.pdf



参照条文
労働安全衛生法 第66条の3(健康診断の結果の記録)
 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第66条第1項から第4項まで及び第5項ただし書並びに前条の規定による健康診断の結果を記録しておかなければならない。


労働安全衛生規則 第51条(健康診断結果の記録の作成)
 事業者は、第四十三条、第四十四条若しくは第四十五条から第四十八条までの健康診断若しくは法第六十六条第四項の規定による指示を受けて行つた健康診断(同条第五項ただし書の場合において当該労働者が受けた健康診断を含む。次条において「第四十三条等の健康診断」という。)又は法第六十六条の二の自ら受けた健康診断の結果に基づき、健康診断個人票(様式第五号)を作成して、これを五年間保存しなければならない。


(宮武貴美


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