過労死の判断基準~時間外労働100時間以上は要注意




 当社は、残業時間がかなりの時間に達している従業員が多いため、長時間労働による過労死を危惧しております。今回、過労死の判断基準が改正されたと聞きましたので教えてください。



 過労死・過労自殺が労災認定や損害賠償にとどまらず、経営者や管理者が刑事責任を問われる事件も発生しています。
※例:広告会社に勤務していた女性(当時23歳)は入社後2年にわたり長時間労働を余儀なくされ、クモ膜下出血で死亡した。同社は、体調不良の訴えに対し業務上の配慮を行わず、年1回の健康診断さえ行っていなかった。遺族は会社に対して損害賠償請求訴訟を行い、労基法違反などで罰金刑の有罪判決が確定した。 【土川事件】


 長時間残業をさせ、36協定(時間外労働に関する労使協定)を締結しておらず、法律で定められた年1回の健康診断も行っていない場合に過労死・過労自殺が発生した場合には、経営者・管理者が刑事責任を問われる可能性が高くなると思われます。
※過労死の事例については厚生労働省等が通達という形で「認定基準」を設けており、それぞれ異なる点はありますが、基本的な考えはほぼ一致します。


◆取り扱う疾病の範囲
・認定基準は、業務上の過重負荷によって発症しうる脳・心臓疾患を次の疾患に限定しています。
1)脳血管疾患  脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症
2)虚血性心疾患 心停止(心臓性突然死含む)、狭心症、心筋梗塞症、解離性大動脈瘤
 これ以外の疾病がただちに労災として認められないわけではありませんが、認定基準により判断される疾病としては限定されています。


◆認定基準
・ 発症前1ヶ月ないし6ヶ月にわたり、1ヶ月あたりおおむね45時間を越える時間外労働を行わせた場合は時間が長くなればなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると考えられます。
・ 発症前1ヶ月間におおむね100時間を超える時間外労働を行わせた場合、または発症前2ヶ月ないし6ヶ月間に渡り1ヶ月あたりおおむね80時間を超える時間外労働をさせた場合は、業務と発症との関連性が強いと考えられます。


◆その他の判断基準
・その他、厚生労働省では残業時間基準のほかに、次の6項目を判断基準にするとしています。
(1)不規則な勤務
(2)拘束時間の長い勤務
(3)出張の多い勤務
(4)交替制・深夜勤務
(5)作業環境(温度・騒音・時差)
(6)精神的緊張を伴う勤務
 例えば深夜勤務や精神的緊張を伴う仕事では、1か月平均80時間以内の残業であっても労災の対象になりうるというものです。



参考リンク
厚生労働省「脳・心臓疾患の認定基準の改正について」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/0112/h1212-1.html
厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/0104/h0406-6.html


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