基準日を利用した年次有給休暇の管理方法

 年次有給休暇(以下「年休」という)は、入社後半年経過時点で10日が付与され、その後1年経過毎に一定日数が付与されていきます。よって入社日にバラツキがあると、年休の付与日にもバラツキが出るため、管理はかなり煩雑になります。そこで年休付与の基準日を設定し、その管理を画一化することで、管理上の負担を軽減するという対応(斉一的取扱い)を取ることがあります。本日はこの年休付与に関する基準日を設定する際のポイントについてお話しましょう。


 年休付与の基準日を設定する場合ですが、もっとも多いのは毎年1回、10月1日を基準日とする方法でしょう。その際のポイントは、いずれの入社日においても、労働基準法で定める半年で10日という基準を下回らないことになります。よって年に1回、10月1日に基準日を設定する際には、基準日までの期間が6ヶ月に満たない4月1日から9月30日までに入社の社員については、基準日である10月1日に初年度の10日の年休を付与すれば、それ以前の前年10月1日から当年3月31日までに入社の社員については、基準日である10月1日よりも前に6ヶ月が経過してしまうため、少なくとも6ヶ月を経過した時点で10日の年休を付与し、10月1日に2年度目の年休である11日を付与する必要があります。
例)前年10月1日入社の場合には6ヶ月経過の4月1日に10日付与。その後、基準日である10月1日に11日を付与することになります。


 しかしこれでは初年度の年休付与について、個人別管理を行う必要があることから、先ほどの例で前年10月1日から当年3月31日までに入社の社員については入社と同時、もしくは試用期間満了時点で初年度の10日を付与することが少なくありません。


 基準日を設定すれば基本的に年に1回、年休付与の管理を行えば良いので事務負担の軽減を図ることができますが、いまの例で見たように前倒しで年休付与する必要があるため、法定の付与日数に比べ、トータルの負担は確実に増加します。また入社日による社員間の不公平(10月1日基準日の場合、3月31日入社の者は10月1日の時点で21日、4月1日入社の場合は10日の有給付与となり、たった1日の入社日の違いによって、11日も年休日数が変わることになる)が発生するなど、問題も少なくありません。


 よって実務的には基準日を年に1回とするのではなく、初年度の年休が6ヶ月で付与されるため、年に2回の基準日設定をするなどの工夫が必要となります。基本的には基準日の回数が少なければ少ない方が社員間の不公平が大きくなるため、管理の手間とのバランスを考慮し、年に数回の基準日を設定することがベターではないかと思います。繰り返しになりますが、年休の基準日管理を行う際には、各時期経過時点での年次有給休暇日数が労働基準法で定められた日数を満たしていることが必要であるということが求められます。



参考リンク
山口労働局「年次有給休暇の与え方」
http://www.yamaguchi.plb.go.jp/relate/roudou/jyouken/jyouken05.html
参照通達
平成6年1月4日基発1号「年次有給休暇の斉一的取扱い」
 (1)の年次有給休暇について法律どおり付与すると年次有給休暇の基準日が複数となる等から、その斉一的取扱い(原則として全労働者につき一律の基準日を定めて年次有給休暇を与える取扱いをいう)や分割付与(初年度において法定の年次有給休暇の付与日数を一括して与えるのてはなく、その日数の一部を法定の基準日以前に付与することをいう)が問題となるが、以下の要件に該当する場合には、そのような取扱いをすることも差し支えないものであること。
イ 斉一的取扱いや分割付与により法定の基準日以前に付与する場合の年次有給休暇の付与要件である8割出勤の算定は、短縮された期間は全期間出勤したものとみなすものであること。
ロ 次年度以降の年次有給休暇の付与日についても、初年度の付与日を法定の基準日から繰り上げた期間と同じ又はそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げること。(例えば、斉一的取扱いとして、4月1日入社した者に入社時に10日、1年後である翌年の4月1日に11日付与とする場合、また、分割付与として、4月1日入社した者に入社時に5日、法定の基準日である6ヶ月後の10月1日に5日付与し、次年度の基準日は本来翌年10月1日であるが、初年度に10日のうち5日分について6ヶ月繰り上げたことから同様に6ヶ月繰り上げ、4月1日に11日付与する場合などが考えられること)


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