リスク資産の割合が高まる家計資産の残高
退職給付制度改革の中で確定拠出年金制度が議題に挙がる際、必ず聞かれるのが「当社の従業員に自己責任による投資をさせるなんて無理だ」という声です。この意見が、同制度の導入を阻害する1つの大きな理由ですが、統計データから見ても本当にそうなのでしょうか。そこで参考になるデータ分析が内閣府から発表されました。今日はその紹介を通じて、金融資産におけるリスク許容度が徐々に高まっている現状を見てみたいと思います。
日銀の資金循環統計によると、2005年度末の家計の金融資産残高は1,506兆円と年度ベースでは過去最高額となりましたが、そのうち、現金・預金の保有割合は2005年度末で51.2%となっており、56.7%であった2002年度末から大きく低下しています。一方で、2002年度末に7.9%であった株式等および投資信託の保有割合は、2005年度末には15.4%と、ほぼ倍増しています。2005年度については、株価の上昇によって株式等の時価評価額の増加の影響が大きいと言えるでしょうが、全体としては投資信託等への投資額の増加が顕著であると言うことができるでしょう。また別の資料を見ると、いわゆるリスク資産(株式・株式投資信託および外貨預金・外債の合計)の割合はすべての年齢層で高まっており、相対的危険回避度(リスクが大きい場合よりも小さい場合を好む度合いを示す指標)についても、全体として危険回避度が低下し、金融資産のリスク許容度が高まっています。
この調査はちょうど株価の上昇局面にあった2005年度の調査であるため、その影響は否定できませんが、国民全体的には徐々に投資に対するリスク許容度が高まりつつあるということは言えるのではないでしょうか。確定拠出年金制度導入における投資マインドの低さという制約は年々小さくなっていくことでしょう。
参考リンク
内閣府「家計の金融資産に対するリスク許容度」
http://www5.cao.go.jp/keizai3/shihyo/2006/0710/737.html
日本銀行「資金循環」
http://www.boj.or.jp/theme/research/stat/sj/
(大津章敬)
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