ガソリン価格急騰の中、通勤手当はどのように設定するか

過去19年間のレギュラーガソリンの全国平均価格 ガソリン価格の急騰が続いています。石油情報センターの調査によれば、8月のレギュラーガソリン全国平均価格は144円と過去19年間の統計の中でも最高値を記録しています。このような状況を背景に、社員より「通勤手当の単価を見直して欲しい」という要望が多くの企業で寄せられていると聞きます。そこで本日は通勤手当の設定方法について取り上げたいと思います。


 公共交通機関を利用する場合には、1ヶ月の通勤定期代を支給することがもっとも一般的となっています。その他関連事項としては「毎月の上限額をいくらに設定するのか」「コスト削減のために3ヶ月や6ヶ月といった期間の長い定期券の代金とするかどうか」「勤務地変更や退職の際の定期券の精算はどうするか」「最寄り駅まで一定の距離がある場合の取り扱いをどうするか」「新幹線通勤を認めるのか。また認める場合の条件はどうか」といった点がポイントとなります。


 一方、今回問題となっている自家用車通勤の場合の通勤手当ですが、以下のいずれかで定められることが通常です。
算式に基づく計算
 「往復通勤距離×所定勤務日数×ガソリン単価÷平均燃費」
 この計算方法の場合は「通勤距離は実測と直線距離のいずれを適用するのか」「所定勤務日数は毎月変動させるのか、年平均で行うのか」「ガソリン単価はどのように設定・改定するのか」「燃費は自動車の排気量等によって変えるのか、一律とするのか」「燃費の設定はどのように行うのか」といった点が検討のポイントとなります。
距離区分別定額制
 の方法の場合は社員個別に計算を行う必要があるため、煩雑であると考える場合には、距離区分別の定額制を採用することがあります。この場合、例えば「2キロメートル以上10キロメートル未満は4,100円」というように通勤手当を設定することになります。その仕組みを採用する場合には、通勤手当の非課税通勤費限度額をそのまま当てはめることも多いでしょう。


 さての方法で通勤手当を計算する場合には、ガソリン単価を一定の指標に基づき、設定する必要があります。この場合、毎年基準日を定め、その日時点の会社の契約スタンドにおける単価を適用する例なども見られますが、より客観的な指標としては、財団法人日本エネルギー経済研究所 石油情報センターが毎月公表している「給油所石油製品市況調査」があります。これは全国約3,500の給油所を対象として、ガソリン(ハイオク、レギュラー)、灯油、軽油の毎月10日現在の小売価格を調査しているもので、各都道府県別にデータが公表されています。よってこのデータを元に、毎年1回見直しを行うというルールを定めるもの良いのではないでしょうか。


 また通勤距離をどのように測定するのかというのもなかなか煩雑な作業になりますが、最近、Mapionが「キョリ測」というサービスを開始しました。これは地図上に任意のポイントを付けて、目的地までの距離を測る機能です。自宅と会社の住所を入力すると自動的に最短の道のりを計測するということまではできませんが、便利なサービスではないかと思います。


 以上、今回は通勤手当の設定方法についてお話しましたが、この記事を執筆するにあたり、昭和62年4月以降の過去19年間のレギュラーガソリンの全国平均価格データを集計(左上グラフ)してみました。すると、その平均は112円という結果になりました。なお最低は平成11年5月の90円、最高は先月平成18年8月の144円となっています。平成9年以降100円前後の価格がかなろ長い間続いていましたので、ここ2年間で約40%も価格が急騰しており、社員のみなさんにとっては大きな負担感に繋がっていることと思います。しばらくはこの傾向が続くと予想されますので、これを機会に通勤手当計算方法の明確化をされてはいかがでしょうか。



参考リンク
タックスアンサー「電車・バス通勤者の通勤手当」
http://www.taxanswer.nta.go.jp/2582.htm
タックスアンサー「マイカー・自転車通勤者の通勤手当」
http://www.taxanswer.nta.go.jp/2585.htm
財団法人日本エネルギー経済研究所 石油情報センター
http://oil-info.ieej.or.jp/cgi-bin/index.cgi
Mapionキョリ測
http://www.mapion.co.jp/route/


(大津章敬)


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