役職定年制度を採用する企業は40.4%

役職定年制度を採用する企業は40.4% 先日、産労総合研究所より「中高年層の処遇に関する実態調査」という報道資料が発表されました。これは全国1・2部上場企業と同社会員企業から任意抽出した3,500社を対象に実施されたアンケートの結果。この調査では「中高年層を対象にした賃金減額措置」、「役職定年制度や早期退職優遇制度の有無と運用実態」といった非常に興味深い内容が取り扱われています。そこで今回はこの中から役職定年制度の運用実態について、取り上げてみたいと思います。


役職定年制度の導入状況
 制度導入状況は、以下のように40.4%の企業で導入がなされています。この導入率は従来よりほぼ4割台で推移しているため、特に大きな動きはないと見て良さそうです。
 役職定年制度あり 40.4%
 役職定年制度なし 56.4%
 導入検討中 2.4%
 その他 0.3%
 無回答 0.6%


役職定年の設定方法
 次に役職定年の設定方法の設問については、「全役職、同一年齢一律の設定」が69.9%、「役職別」が24.3%となっています。なお一律設定の場合には、主任以上が41.1%と最も多く、また役職定年年齢の平均は55.6歳となっています。ちなみにこれは調査結果ではなく、私の経験となりますが、課長以下55歳・部長58歳と定めるような事例も多いように思います。


役職定年後の賃金処遇
 役職定年後の処遇に関しては、「役職手当を支給しない」が39.7%、「減額する」が30.9%となっています。これ以外に「もともと役職手当はない」が19.9%あることを勘案すれば、ほとんどの企業で役職手当の不支給もしくは減額が行われていることが分かります。一方、基本賃金については、「変わらない」が50.7%、「減額する」が43.4%となっていますが、この点については役割給制度の導入状況など、賃金制度に大きな影響を受けるため、役割給制度以外の企業ではより「変わらない」とする企業の割合が高くなっていると予想されます。


実際の運用状況
 運用状況については制度を「厳格に運用している(全員に適用))が29.4%に対し、「一部役職にとどまる者もいる(柔軟に運用)」が59.6%に達しています。後任者がいないといった理由でそのような柔軟な運用をする傾向が見られますが、これは運用上、社員間に大きな不公平感を生む危険性が高いため、実際の制度設計においては十分な議論が必要となるところです。悪い見方をすれば、後継者育成を怠った役職者ほど留任できる訳ですから、役職定年を導入する際には例えば50歳に到達すると、後継者育成の個別計画を立案させ、人事評価においても大きな比重をもって評価するといった対策が求められます。


 多くの企業でポストの増加が期待しにくい状態になっていることを考えると、短期的には不効率であっても、中期的な人材育成および動機付けのために役職定年制の導入を検討しなければならない状況が今後増加することになると予想されます。年齢給の廃止など、全体としては年齢とは無関係な人事取り扱いを行う流れの中での、一律年齢による処遇決定という制度になりますので、導入に際しては役職定年対象者の役定後の職務配置などデメリットの検証と、計画的な人材育成の仕組みの構築が求められます。




参考リンク
産労総合研究所より「中高年層の処遇に関する実態調査」
http://www.e-sanro.net/sri/ilibrary/pressrelease/press_files/srip_061003_2.pdf


(大津章敬)


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