キャリアは誰のものか
「キャリア」といえば、以前は「キャリア組」や「キャリアアップ」という言葉をイメージしました。それは国家公務員で上級試験に合格している者を表す呼称、職業・技能上の経験、あるいは経歴という意味で使われていました。これに対し最近では「キャリア開発」や「キャリアカウンセリング」という言葉をよく耳にします。キャリアは仕事上のキャリアだけでなく、今後どうやって行くのか、どうやって行(生)きたいのかを考え、人生全般を表すものとして意味が広がっています。
キャリアは誰のものでもなく、個人に培われるものです。会社で働く社員は、職業経験だけでなく、家族や友人、趣味、自己啓発など会社内外の手助けを借りてキャリアを展開しています。会社の立場から考えると、従業員のキャリアは組織の目標を達成するための経営資源に違いありません。そして会社は、従業員にキャリアを提供する場を担っています。自らのキャリアデザインを描き、展開していくのは本人の役割ですが、いまの企業にとっては、それを支援していくことの重要性が高まっています。そこで今後、社員のキャリアデザインに関する記事を掲載していこうと計画していますが、まず初回の今回は、身近にあるキャリア支援策を2つお話したいと思います。
人事評価など面談の機会
人事評価をする際に、面談を行っている会社は多いと思いますが、何を話されていますか。今期の評価や来期の計画、目標設定が中心になっていることでしょう。これからはそこから一歩踏み込んで、「本当のところ何がやりたいのか」について聞いてみてください。社員が進もうとしている方向性を知り、会社がそれを後押しすることによって、社員の本人の動機づけに繋がっていきます。改まった社員面談の機会は年に数回しかありません。これからの時期であれば冬季賞与評価の面談の機会などを活かして、会社の方向性とと社員の方向性の擦り合わせを行ってみてはいかがでしょうか。
社員教育
社員を社外研修に参加させる際、業務に関する知識の習得が中心になっていませんか。業務に直結するものだけでなく、接遇や時間の活用術、改善活動の手法などを学ぶことは、仕事をする上での基礎体力の向上に繋がり、後々の大きな飛躍に向けたベースとなります。多くの企業で社員研修に関する関心が高まっていますが、その時間を確保し、計画的な能力開発を行うことは、会社・社員の双方にとって重要な課題となっています。
これら2つの支援策は、実際に多くの企業で日常的に行われているものです。既にある仕組みを見直し、その効果を高めることが、キャリア支援のスタートとして求められています。次回は「キャリアの停滞」を紹介していきたいと思います。お楽しみに。
(福間みゆき)
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