【労務管理は管理職の役割】残業命令の条件

 従来から時間外労働(残業)をさせることが当たり前のようになっている職場であったとしても、社員に時間外労働をさせるためには一定の条件が整っていなければなりません。また社員から残業拒否されたときに、管理職としてどのように考えれば良いのかなど、本日は管理者のみなさんに押さえておいて頂きたい時間外労働の基本をお話させて頂きます。


【残業はあくまでも「臨時的なもの」】
 労働基準法が定めている法定の労働時間は「1日8時間、1週40時間」となっています。この時間を超えて業務を行う場合、その労働時間が時間外労働となります。労働基準法の趣旨は、時間外労働はあくまでも「臨時なもの」であって、それを無制限に認めている訳ではありません。まずはこの原則を認識しておいてください。


【適法に残業命令を出すための必要条件】
 次に、適法に残業命令を出すための必要な条件を確認しておきましょう。労働基準法では時間外労働を行わせる前提として、以下の要件を定めています。
事業場における労使協定(36協定)の締結および労働基準監督署への届出
36協定の内容に基づいた就業規則や労働協約における定め


 社員に時間外労働をさせるためには以上の要件が必要とされますが、その場合でも常に残業命令が有効であるとはされていません。従来より時間外労働義務の根拠をめぐって、例え36協定の締結や就業規則等への定めがあったとしても、具体的必要が生じたときに個々の労働者の承諾がなければ残業義務はないとする「個別的同意説」と、36協定と就業規則や労働協約があり、具体的必要が生じた際に、それに基づいて使用者が残業命令を出せば、労働者は時間外労働義務を負うとする「包括的命令権説」との対立がありました。


 この点に関し、最高裁は「日立製作所武蔵野工場事件」(最高裁一小 平成3年11月28日判決)において、次のような見解を示しています。就業規則の中に、概括的・網羅的でない「一定の業務上の事由」を定めていることを求め、さらに、「就業規則の規定の内容が合理的なものである限り、それが具体的労働契約の内容をなすから」使用者は命令権を獲得し、その命令によって労働者の義務が具体化する、というものです。


 よって、時間外労働を命令する場合には、先ほどのの手続に加え、合理的要件をなすものとして、具体的な業務上の必要性が求められています。なお、社員の事情もありますので必ずしもの条件が揃っていたとしても、常に残業命令が有効だとはいえないことがあります。例えば、労働者本人や家族が体調不良であるなど、どうしても残業ができない事情のある場合は、難しい判断になりますが、これに関する具体的で明確な境界線はなく、労使双方の事情によるバランスの問題だといえるでしょう。このトラブルを防ぐには管理職・労働者とも常日頃からコミュニケーションを取り、それぞれの事情を十分に知っておくことが肝要です。



参照条文
労働基準法第32条(労働時間)
 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。2 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。
労働基準法第36条第1項(時間外及び休日の労働)
 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、1日について2時間を超えてはならない。


(鷹取敏昭)


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