年次有給休暇時間付与法制化 議論の内容と方向性
ホワイトカラーエグゼンプションの年収要件などで何かと話題を振りまいている労働政策審議会労働条件分科会ですが、先日示された「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)(案)」の中に、以前、日本経済新聞等にも取り上げられ話題となった年次有給休暇の時間付与に関する記述があります。
多くの企業にとって、年休の管理は実務担当者泣かせの非常に煩雑なものですが、これに一定の上限日数まで時間単位の付与を行うというオマケが付いたら、「今後はどうやって年休の管理すれば良いのか」という困惑する声が、以前より実務家の間では頻繁に聞かれました。この点に関し、今回の報告書案を見てみると、以下のような記載がなされています。
4 年次有給休暇制度の見直し
法律において上限日数(5日)を設定した上で、労使協定により当該事業場における上限日数や対象労働者の範囲を定めた場合には、時間単位での年次有給休暇の取得を可能にすることとすること。
以前の新聞報道では、時間単位の取得が法制化(強制)されるというような書き方がされているものもありましたが、実際には上記引用にあるように、あくまでも労使協定を締結すれば、年休の時間単位の取得をできるようにするというスタンスになっています。この内容であれば、原則は従来どおり、1日もしくは半日取得であり、ただちに時間単位の取得を認め、その管理方法等を見直す必要はなさそうです。ただ労働者側からは時間単位での取得について要望が強く寄せられるでしょうから、労働組合のある企業では早い段階から、その要求が出てくることが予想されます。もっともこの内容はまだ審議会の報告案の段階ですので、実際に法制化されると決定した訳ではありませんが、この法改正については上限日数が設定された上に労使協定が前提であり、また使用者側、労働者側が大きく対立するような内容でもありませんので、このまま法制化されるのではないかと考えています。
参考リンク
労働政策審議会「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)(案)」
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/12/s1208-12a.html
(大津章敬)
当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。