[労働時間制度改革]企画業務型裁量労働制の見直し(3/7)

 本日は労働政策審議会の労働時間制度改革に関する答申についての連載の3回目。今回は企画業務型裁量労働制の見直しについて見てみることにしましょう。今回の答申では、その適用範囲の拡大が盛り込まれていますので、今後、この制度の適用事例が増えてくるかも知れません。


[答申文書]
6 企画業務型裁量労働制の見直し
(1)中小企業については、労使委員会が決議した場合には、現行において制度の対象業務とされている「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」に主として従事する労働者について、当該業務以外も含めた全体についてみなし時間を定めることにより、企画業務型裁量労働制を適用することができることとすること。
(2)事業場における記録保存により実効的な監督指導の実施が確保されていることを前提として、労働時間の状況及び健康・福祉確保措置の実施状況に係る定期報告を廃止することとすること。
(3)苦情処理措置について、健康確保や業務量等についての苦情があった場合には、労使委員会で制度全体の必要な見直しを検討することとすること。


[ポイント]
 今回の答申ではホワイトカラーエグゼンプションに注目が集中してしまっているため、その他の事項はあまりマスコミでも取り上げられませんが、実務家としてはこの企画業務型裁量労働制の見直しの方向性を押さえておきたいところです。従来、企画業務型裁量労働制の対象労働者は、指針により「当該対象業務に常態として従事していること」が原則とされていました。今回の答申ではこの部分が、「主として従事する労働者」に変更され、また「当該業務以外も含めた全体についてみなし時間を定めることにより、企画業務型裁量労働制を適用することができる」という方向で法制化が検討されています。これまで企画業務型裁量労働制の適用事例はあまり多くありませんでしたが、このように適用範囲が拡大することで、年収要件の高さなどの要因で、ホワイトカラーエグゼンプションの適用が難しい管理部門のスタッフ職などには、この制度の適用を検討することも出てくるのではないでしょうか。


[参照条文]
労働基準法第38条の4
 賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)が設置された事業場において、当該委員会がその委員の5分の4以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁に届け出た場合において、第2号に掲げる労働者の範囲に属する労働者を当該事業場における第1号に掲げる業務に就かせたときは、当該労働者は、厚生労働省令で定めるところにより、第3号に掲げる時間労働したものとみなす。
※以下、省略


[参照指針]
新・裁量労働制-企画業務型-従事労働者の労働条件確保のための指針(平成11年12月27日 労働省告示第149号)
2 法第38条の4第1項第2号に規定する事項関係
(1)当該事項に関し具体的に明らかにする事項
 法第38条の4第1項第2号の「対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者」であって使用者が対象業務に就かせる者(以下「対象労働者」という。)は、対象業務に常態として従事していることが原則である。



参考リンク
厚生労働省「今後の労働契約法制の在り方について」及び「今後の労働時間法制の在り方について」についての労働政策審議会からの答申について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/12/h1227-4.html
厚生労働省「企画業務型裁量労働制」
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/roudou/kikaku/index.html


(大津章敬)


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