[労働時間制度改革]管理監督者の適用範囲の見直し(4/7)
本日は労働政策審議会の労働時間制度改革に関する答申についての連載の4回目。今回はまだ具体的な内容は見えないながらも、企業の労働時間管理に大きなインパクトを与える可能性が高い管理監督者の適用範囲の見直しについて見てみることにしましょう。
[答申文書]
7 管理監督者の明確化
(1)スタッフ職の範囲の明確化
管理監督者となり得るスタッフ職の範囲について、ラインの管理監督者と企業内で同格以上に位置付けられている者であって、経営上の重要事項に関する企画立案等の業務を担当するものであるという考え方により明確化することとすること。
(2)賃金台帳への明示
[ポイント]
ホワイトカラーエグゼンプションについては後日取り上げたいと思いますが、その適用のための年収要件が800万円以上とも900万円以上とも言われるこの制度を中小企業で適用することは、現実的に当面は難しいと考えています。しかし、ホワイトカラーエグゼンプションの導入と同時に管理監督者の適用範囲の見直しが検討されているため、結果的にはその影響が懸念されます。
ご存知の通り、管理監督者については深夜業を除き、労働時間に関する法規制が適用除外されています。結果、時間外手当が支給されないということに繋がるわけですが、これにより世間のほとんどの企業では社員の多くを管理監督者とすることによって、時間外手当の負担を実質的に回避しています。今回の答申ではこの問題にメスを入れ、管理監督者の範囲の明確化を行おうとしていますが、これが労使のどちらに傾くのかが注目されます。使用者側に傾けば、いわゆるスタッフ職の範囲の拡大により、先に述べたような状態が一部肯定される可能性が出てきますが、逆に労働者側に傾けば、管理監督者の適用が厳格化され、従来管理監督者として扱われていた労働者の取扱いを如何にするかという問題が発生します。これが厳格に解釈された場合、そこから溢れた者については、ホワイトカラーエグゼンプションや企画業務型裁量労働制などを適用するということになるでしょうが、中小企業では年収要件などからホワイトカラーエグゼンプションの適用が難しいのが現状であるため、結果的には管理監督者の適用の厳格化という面だけが影響し、規制緩和ではなく、むしろ規制強化に繋がる危険性が高いのではないかと考えています。この点は非常に影響が大きい部分ですので、今後の法制化の流れおよび各種政省令などをフォローしておきたいところです。
[参照条文]
労働基準法第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
1.別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者
2.事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
3.監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
[参照通達]
労働基準法の施行に関する件(昭和22年9月13日 発基第17号)
法第四一条関係
(一) 監督又は管理の地位に存る者とは、一般的には局長、部長、工場長等労働条件の決定、その他労務管理について経営者と一体的な立場に在る者の意であるが、名称にとらはれず出社退社等について厳格な制限を受けない者について実体的に判別すべきものであること。
参考リンク
厚生労働省「今後の労働契約法制の在り方について」及び「今後の労働時間法制の在り方について」についての労働政策審議会からの答申について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/12/h1227-4.html
茨城労働局「労働基準法第41条の「管理監督者」とは?」
http://www.ibarakiroudoukyoku.go.jp/soumu/qa/kanri/kanri01.html
(大津章敬)
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