平成19年4月に行われる労働関連法改正のポイント~健康保険法・雇均法の改正(2/2)
昨日は平成19年4月に改正される労働関連法の中から、雇用保険法の改正のポイントについてお話しました。2日目の今日は、健康保険法および男女雇用機会均等法改正のポイントをみていくこととしましょう。
[健康保険法改正]
健康保険法は、昨年10月より徐々に改正が行われていますが、4月から実施される主な改正点は5つあります。
標準報酬月額の上下限の変更
標準賞与額の上限の変更
傷病手当金・出産手当金の支給額変更
任意継続被保険者の給付の一部廃止
被保険者資格喪失後の出産手当金の廃止
いずれも実務上大きな影響がありますが、ここでは社会保険料に関連する2つのポイントを取り上げましょう。
標準報酬月額の上下限の変更
保険料の計算や各種給付の計算基礎となる標準報酬月額には上限および下限が設けられていますが、現在は下限が9万8千円、上限が98万円となっています。今回はこれが改正され、下限5万8千円、上限121万円となります。この変更により、月額報酬が120万円の被保険者は、年間10万円以上の保険料負担増加となります。
標準賞与額の上限の変更
現在、賞与が支給された場合の社会保険料は、標準賞与額に毎月の保険料と同率の保険料率を乗じて算出されます。この標準賞与額にも、支給1回につき健康保険は200万円、厚生年金では150万円という上限が設けられていますが、今回の法改正により上限が年間(4月1日~3月31日の年度で判断)の賞与累計額で540万円に引き上げられることとなりました。平成15年4月の総報酬制導入に伴い、賞与支給回数を減らし、この上限を活用することで社会保険料の節減を行っていた企業にとっては、保険料負担の増加が予想されます。なお、この取扱は健康保険のみであり、厚生年金保険については従来どおりとなっているため、注意が必要です。
[男女雇用機会均等法改正]
男女雇用機会均等法は、これまでは「女性保護」という福祉的な意味合いが強くありましたが、今回、「職場に働く人が性別により差別されることなく、また、働く女性が母性を尊重されつつ、その能力を十分発揮することができる雇用環境の整備」という考えをのもとに以下の7点の改正が実施されます。
性別による差別の禁止
禁止される差別の追加
間接差別の禁止
妊娠・出産等の不利益取扱いの禁止
セクシャルハラスメント対策義務化
ポジティブ・アクションの推進
企業名公表・過料の創設
この中でも特に注目すべき事項は、セクシャルハラスメント対策の義務化でしょう。これまでは、職場における女性に対するセクシャルハラスメント対策としては、「雇用管理上必要な配慮をすること」が事業主に義務付けられていましたが、改正により、「雇用管理上の必要な措置を講ずること」が義務付けられました。その必要な措置とは、以下の4点です。
事業主の方針の明確化およびその周知・啓発
相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
職場におけるセクシャルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
からまでの措置と併せて講ずべき措置
今後は、苦情窓口の設置や就業規則の服務規律へのセクハラ条項の追加、懲戒処分の明確化など、従来よりも具体的な措置を企業として実施していくことが求められています。
このように今春もいくつかの法改正が予定されています。就業規則の改定を含め、実務的に対応しなければならない事項が複数ありますので、早めの準備をオススメします。
参考リンク
社会保険庁「医療保険制度が改正されました」
http://www.sia.go.jp/topics/2006/n1004.html
厚生労働省「平成19年4月1日から、改正男女雇用機会均等法等が施行されます」
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/kaiseidanjo/index.html
(宮武貴美)
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