エンプロイメンタビリティ改善による企業魅力度の向上
エンプロイヤビリティ(Employability)という言葉は今や、一般の経営用語といっても良い位、世間に浸透してきています。この言葉は一般的に「社員が他の会社で通用する能力」という意味合いで使われていますが、その理解で十分なのでしょうか?日本経済団体連合会は、エンプロイヤビリティを「転職を可能にする能力」と定義するのと同時に、「当該企業において継続的に雇用され得る能力」と定義しています。一部で「社員のエンプロイヤビリティの向上は社員の転職を促進する」といった論調も見られますが、それは非常に一面的な見方であり、社員の能力向上により業務の質の向上や、組織への求心力を高めるという意味からも、社員のエンプロイヤビリティの開発は、企業にとっても重要な課題となっていると理解する必要があるでしょう。
一方、エンプロイヤビリティの対語として、「エンプロイメンタビリティ(Employment Ability)」という言葉があります。前者が「社員が雇用されうる能力」とすると、後者は「会社が雇用しうる能力」、現在・未来の社員を雇用できる能力のことを指し、「人材を引きつける力」と言い換えることもできるでしょう。会社は自社の商品・サービスの価値を高めていますが、それだけでなく会社の内側の価値を高めなければならなくなってきました。人材が流出したとしても市場から人材が流入してくれば会社は事業を継続することができ、入社した人材が優秀であれば、より望ましい結果になります。一方、人材が流出したままで人材が流入しなければ、最悪の場合、残った社員さえも流出してしまうこともあるでしょう。
特に今後は若年労働者の現状により、人材の獲得合戦が繰り広げられることが予想されるため、企業としてはエンプロイメンタビリティの向上が重要な人事戦略となってきます。これを向上させるためには、既存社員のエンプロイヤビリティを高め、彼らに「この会社であれば自分が成長していける」という、成長実感を持たせる環境を構築することが重要となります。社員は自分で育つものと考えることもできますが、社員の力だけに成長を任せず、会社が積極的にその成長を促すことが求められています。成長実感を持ち、生き生きと仕事に取り組んでいる社員がいる会社に、ヒトは魅力を感じるのではないでしょうか。それでは次回は「燃え尽き症候群」を紹介していきたいと思います。お楽しみに。
(福間みゆき)
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