導入事例が急増する社員意識調査

 先日、日本経済新聞にも特集記事が掲載されていましたが、社員の意識調査が注目を浴びています。その背景には人事施策などの影響を受けて社内の雰囲気や意思疎通が悪くなり、それを改善したいという企業の課題認識が指摘されます。そして、一般的に社員の満足度が、そのやる気やパフォーマンスに影響を与えているのではないかと考えられているため、それを改善することで「社員満足」を「顧客満足」に繋げたいという思いがあるようです。


 社員数が少ない組織であれば、日頃のコミュニケーションを意識的に取ることである程度、社員の意識がどのような状態にあるのかを把握することも可能でしょうが、社員規模が大きくなると会社は社員個々人を見ることが難しくなり、社員がどのような意識を持っているのか分かりづらくなります。また世代間の考え方や認識の違いによって、お互いが誤解していることもあるでしょう。そのため、社員の意識を調査することで現状を把握し、課題を抽出しようとする取り組みが盛んに行われています。


[社員意識調査のコツ]
 社員意識調査には社員の協力が欠かせません。社員の協力を得て、効果的に調査を実施するためには、会社は事前に次の3点を明示しておくことが重要になります。
調査を行う目的
調査結果の開示方法(いつ、どのように)
個人の回答結果が明らかにならないことを約束する旨


 社員意識調査を実際に行う上では、その目的を明確化することが欠かせません。どのようなことを知りたくて調査を行うのかを明確にしておかなければ、その結果も焦点が定まらず、十分な効果を得ることはできません。あらかじめ問題の目星を付け、その原因を突き止めることができるようにしておくことで、調査を行う価値が高まって来ますが、まずはその目的を社員に対し、十分に説明することが求められます。調査を行ったが、社員には結果を通知しないというのではむしろ不信感を招く結果になりかねません。ですから調査結果をどのような形で社員に対してフィードバックするのかも事前に示しておきます。また個人がどのような回答をしたのかが分かってしまうのでは安心してその記入をしてもらうことは難しいため、質問紙を工夫することで、回答結果によって個人が特定されないことを担保しておくことも重要です。


 なお、調査票に自由記入欄を設けることがありますが、これにも注意が必要です。自由記入欄には社員の様々な意見を得るというメリットがありますが、社員の声を聞いたからには、これに対する何らかのレスポンスが必要になります。すぐには対応できない場合は、社員の声を認識したことだけでも示しておくことが求められます。


[調査結果の活用]
 調査実施後は、その結果から仮説の検証を行い、潜在的な問題を抽出していきます。調査票に設定した項目(例えば部署、役職、年齢)を起点として分析を行ったり、調査項目のカテゴリーごとに関係性があるのかを見ていきます。全体的に見ると問題がなさそうであっても、分析的に見ることで、問題が明らかになってくることもあるでしょう。また、度数分布表を作成することも、問題発見には有効です。例えば、同じ平均値であったとき、それぞれの評価が平均的に回答されている場合があれば不満と満足の両極端の回答しかない場合があり、問題の捉え方が変わってきます。


 またこの調査においては社員の意識を聞くだけではなく、同じ調査内容を経営者や管理職も回答し、そのギャップを見ることも問題発見にとっては有用です。また、調査結果を社員に見せながら、なぜこのような結果になったのか話し合う場を設けることも良いでしょう。解釈の仕方が違っていることが分かったり、議論が深まる機会にもなるのではないでしょうか。


 調査は1回限りで終わりというものではなく、あくまで調査時点での診断結果に過ぎません。調査内容によっては継続的に見ることで問題が判明したり、社員の意識の変化に気付くことがあります。また、具体的な取り組みや何らかの制度導入によって、社員の意識にどのような変化や効果があったのかを推測することもできます。


 組織内コミュニケーションの不全が叫ばれ、社員の価値観の多様化が増している環境では、こうした意識調査を通じて組織の潜在的な課題を抽出し、対策を取ることも、労務管理上重要な課題となってきています。


(福間みゆき)


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