不二家問題にみる企業コンプライアンス

 2007年1月、老舗企業である不二家が引き起こした一連の食品不祥事は大きな波紋を広げ、これに続いて食品企業が続々と“自主点検の結果、判明した不適切使用”を公表しています。このような状況の中で、企業に対する一般社会、消費者の信頼は低下しています。


[業界内と一般社会、消費者の意識ギャップ]
 今回の不二家問題は、実際の被害という点から見ると、数件の異物混入、食中毒が出ているだけで、過去のもの、例えば雪印事件などと比べると非常に小さい事件だといえます。しかし実被害が少ないにもかかわらずここまで問題が大きくなったのは、いくつかの理由が考えられます。


 まず挙げられるのは食品業界内の“常識”と、消費者を始めとする一般社会の食品安全意識に大きなギャップがあるという事実です。例えば、賞味期限についての意識の差として、次のようなことがあります。賞味期限設定は企業が基礎データを基に設定することになっていますが、現場では原料バッチやリワーク(再生)などの兼ね合いで、期限自体が曖昧になることもある一方、消費者サイドでは一律の基準があり、その日を境に品質が激変するようなイメージをもっており、ここにギャップが存在します。


 一般社会の食品安全に対する意識は年々より高度なものへと変化しており、企業はこれまでの常識を捨て、根拠のあるデータに基づいて科学的に対応していくことが望まれます。また食品という身近なものであるだけに、正しい安全知識を双方理解のもと普及させていくことも今後の課題となるでしょう。


[社内の統制が取れていないことのリスク]
 また、今回の問題では自ら決めた社内基準を守れていなかったという点もクローズアップされています。最近何かと話題になることの多い同族会社であったことも、より厳しい目を向けられた一因と考えられますが、実際の被害はともかく、適切な業務が行われていなかったこと、それを隠蔽しようとしたこと自体が問題視される時代になってきたと考えられます。社内業務の適正化は、上場会社に義務付けられる内部統制でも重要なテーマになっています。建前だけでなく、本当にルールが守れる仕組みを作ることが急務ではないでしょうか。


[これからの企業としての取組み]
 企業は一般社会、消費者の信頼なしでは立ち行きません。まず最低限コンプライアンス(法令順守)の姿勢が必要です。また企業に対する期待は法令以外のところにもあります。従って本来コンプライアンスとは、法令順守のみをゴールとするのではなく、その背景にある消費者、社会の要請に対して、自らルールを定め、確実に実施していくことも含めて考えるべきでしょう。


(株式会社名南経営 ISO事業部)


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