解雇予告手当の税務上の取扱い

退職所得の受給に関する申告書 日頃、多くのお客様からの人事労務に関する質問をお受けしていますが、そんな中に「ここは意外に落とし穴だなぁ」とか「この取扱いはあまり知られていないんだ」と感じる事柄があります。そこで本日は最近、お客様からご質問を頂いた中から、解雇予告手当にかかる税務上の取扱いについて取り上げてみたいと思います。



[質問]
 当社では、4月に新入社員を5名雇い入れました。これまで3ヶ月間、OJTにより十分な指導を行ってきましたが、その内1名については勤務態度が悪く、こちらが期待している能力水準までまったく至っていない状況です。そこで本人と話し合いの場を持ち、結果、試用期間が満了する6月末日で解雇することになりました。このため、解雇予告手当を支払う必要があるのですが、その際の所得税計算はどうすれば良いのでしょうか?


[回答]
 解雇予告手当は、退職所得に該当します。


 通常の給与・賞与は給与所得であり、それに関する源泉徴収方法は広く知られているところです。これに対し、解雇予告手当は、いわゆる退職金と同様の退職所得として取り扱われます。退職所得にかかる源泉徴収税額は、勤続年数に応じた退職所得控除額を計算した上で算出しますが、この所得控除額は初年度でも40万円と比較的大きいため、解雇予告手当を支払う場合でも通常はこの控除額の範囲に収まり、結果としては源泉徴収税額がゼロとなることが多いでしょう。ただし、本人から「退職所得の受給に関する申告書」(左画像:クリックして拡大)が提出されない場合には、退職手当の支払金額につき20%の税率によって源泉徴収を行うことなっています。


[まとめ]
 解雇予告手当の支払う場合には、後々のトラブルを避けるためにも、解雇予告手当の計算方法を明示し、その支払い方法を事前に通知しておくべきでしょう。その際に、この申告書を提出してもらい、支払時に受領印をもらっておくという手続きが求められます。


[参考条文]
労働基準法 第20条(解雇の予告)
 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
2 前項の予告の日数は、1日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
3 前条第2項の規定は、第1項但書の場合にこれを準用する。


所得税基本通達 30-5(解雇予告手当)
http://www.nta.go.jp/category/tutatu/kihon/syotok/04/04.htm
 労働基準法第20条《解雇の予告》の規定により使用者が予告をしないで解雇する場合に支払う予告手当は、退職手当等に該当する。



参考リンク
国税庁タックスアンサー「退職所得の金額の計算方法」
http://www.taxanswer.nta.go.jp/1423.htm
国税庁タックスアンサー「退職金を受け取ったとき(退職所得)」
http://www.taxanswer.nta.go.jp/1420.htm
国税庁タックスアンサー「退職金と源泉徴収」
http://www.taxanswer.nta.go.jp/1426.htm


(宮武貴美)


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