平成21年度スタートの裁判員制度に対応する就業規則等の見直し

裁判員制度 平成21年度から裁判員制度の開始が予定されています(具体的な開始日は未定)が、最近、就業規則の変更を検討していると、裁判員として呼ばれた日の取り扱いについて検討するケースが増えてきました。そこで、今回はこのテーマについて取り上げてみましょう。



[質問]
 平成21年度から裁判員制度が導入されると聞きました。裁判員として呼び出しを受けた日は、会社を休まなければならないかと思いますが、その取り扱いはどうすればよいでしょうか?会社は裁判員の仕事をするための休暇申請を拒否することはできますか?また、その日については有給扱いにする必要がありますか?


[回答]
 社員が裁判員に選ばれた場合、企業としてはそのための休暇を認めなければなりません。但し、給与については特段の定めはないため、無給の取り扱いでも問題ありません。


 労働基準法第7条は公民権行使の保障を定めているため、労働者の権利として裁判員や裁判員候補者として選ばれ、この仕事を行うために休暇を取得することを会社は拒否することができません。ただし、賃金の取り扱いについては特段の定めはなく、無給でも問題ありません。会社側の対応としては、特別休暇の項目に裁判員および裁判員候補者として選ばれた場合の休暇取り扱いを追加し、日数や給与の取り扱い、証明書類の提出などを決めておく必要があるでしょう。なお、証明書は裁判所からの発行が予定されていますので、就業規則で提出の義務付けを行うことが求められます。なお、裁判員になったこと等での不利益取り扱いは禁じられておりますので、賞与査定などにおいて欠勤扱いとすることは問題だといえるでしょう。


[まとめ]
 最高裁判所のホームページでは、全国で1年当たり、裁判員候補者として約300人~600人に1人程度(0.18~0.35%)が裁判所に出向き、約3,500人に1人程度(0.03%)が実際に裁判員または補充裁判員として刑事裁判に参加する試算が発表されています。このため、事前に対応方法の検討を行っておく必要があるでしょう。


[参考条文]
労働基準法 第7条(公民権行使の保障)
 使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。


裁判員の参加する刑事裁判に関する法律 第71条(不利益取扱いの禁止)
 労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したことその他裁判員、補充裁判員若しくは裁判員候補者であること又はこれらの者であったことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。



参考リンク
最高裁判所 裁判員制度「裁判員又は裁判員候補者として裁判所に行くために会社を休む場合,有給休暇扱いにしてもらえるのでしょうか。」
http://www.saibanin.courts.go.jp/qa/c7_6.html
最高裁判所 裁判員制度「裁判所には裁判員候補者として何人くらい呼ばれるのですか」
http://www.saibanin.courts.go.jp/qa/c3_15.html
最高裁判所 裁判員制度「裁判員候補者や裁判員となった場合,裁判所に出頭していたこと,裁判員に選任されて裁判員の職務に従事したことなどの証明書は,裁判所から発行してもらえますか。」
http://www.saibanin.courts.go.jp/qa/c7_7.html


関連blog記事
2008年11月19日「お待たせしました!裁判員休暇規程のダウンロードを開始!」
https://roumu.com
/archives/51453215.html


(宮武貴美)


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