中国における労働契約法の改正

 中国の労働契約法が今年6月に全人代で採択され、2008年1月から施行される。労働者に不利な現行の法律体系が「常識的」に整備されたに過ぎないような内容だが、現行での労働契約を前提に事業運営をしてきた外資企業には、計画の見直しを含めた検討を要する内容も少なくない。



契約期間
 現行では期限付き労働契約で期間満了の度に更新契約可能であったが、今回の改正では同一企業に勤続10年以上勤務する従業員が、無期限の労働契約を求めた際には拒絶できない、また期限付き契約の更新は2回までで、3回目の更新から、従業員の求めがあれば無期限の労働契約で更新しなければいけなくなる。 要は終身雇用を前提とした労働契約に変えていこうという姿勢であり、企業とすれば就業規則で「具体的解除項目」を検討した上で明示しておく必要が生じる。企業が意図的に雇用はしたが、その後1年間、労働契約を締結していない場合には無期限の労働契約を締結したものと見なされる罰則規定も明示された。


経済保障
 労働契約が終了(退職時)した際には、勤続1年で1ケ月の賃金の支払義務が生じ、2年で2ケ月、3年で3ケ月・・というように実質的な退職金支給制度ができた。但し、最高限度は12年を超えないという規定や、高賃金の従業員の退職時には会社が所在する地域の平均賃金の3倍を超えない金額とするといった制限規定もある。


集団契約と労働組合
 外資企業に勤務する労働者からの求めがあれば労働組合(工会)の結成を会社は容認し、工会活動費(労働者の実際賃金総額の2%)の支給が義務付けられる。


 労働者搾取の現実から常識的な労使関係に移行させようとする背景が見られるが、中国企業が積極的に労働法遵守の姿勢を貫くかは、今後の動きを見なければならない。しかし外資企業は当然遵守せざるを得ず、契約社員、臨時工等が事業運営の要としてきた企業には、打撃となるところも増えていくだろう。
 
(影山勝行)

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