[改正雇用対策法 Part2]労働者の募集・採用において年齢制限が認められる例外

 前回、労働者の募集・採用の年齢制限禁止について取り上げました。今回は、その例外について取り上げることにしましょう。募集・採用における年齢制限は原則として禁止されますが、厚生労働省令では合理的な理由があって例外的に年齢制限が認められる場合(以下、「例外事由」という)を6点定めています。



定年年齢を上限として、当該上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
労働基準法等法令の規定により年齢制限が設けられている場合
長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請がある場合
60歳以上の高年齢者または特定の年齢層の雇用を促進する施策(国の施策を活用しようとする場合に限る)の対象となる者に限定して募集・採用する場合




 特には、のように、当然に年齢制限が認められるものではありませんが、企業等における雇用管理の実態などを踏まえ、年齢による制限を必要最小限のものとする観点からみて合理的な制限と考えられるものが定められています。なお、新規学卒者の募集に関しては、年齢制限には該当しないこととされています。ただし、青少年の雇用機会の確保等に関して事業主が適切に対処するための指針では、新規学卒者以外の若年者にも門戸が開かれるように努めるよう定められています。


[参考条文]
雇用対策法 第7条
 事業主は、青少年が将来の産業及び社会を担う者であることにかんがみ、その有する能力を正当に評価するための募集及び採用の方法の改善その他の雇用管理の改善並びに実践的な職業能力の開発及び向上を図るために必要な措置を講ずることにより、その雇用機会の確保等が図られるように努めなければならない。


青少年の雇用機会の確保等に関して事業主が適切に対処するための指針(抜粋)
第2 事業主が青少年の募集及び採用に当たって講ずべき措置
 事業主は、青少年の募集及び採用に当たり、就業等を通じて培われた能力や経験について、過去の就業形態や離職状況等にとらわれることなく、人物本位による正当な評価を行うべく、次に掲げる措置を講じるよう努めること。
2 意欲や能力を有する青少年に応募の機会を広く提供する観点から、学校等の卒業者についても、学校等の新規卒業予定者の採用枠に応募できるような募集条件を設定すること。また、学校等の新規卒業予定者等を募集するに当たっては、できる限り年齢の上限を設けないようにするとともに、上限を設ける場合には、青少年が広く応募することができるよう検討すること。


改正雇用対策法 第10条
 事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。


改正雇用対策法施行規則(抜粋)第1条の3(募集及び採用における年齢にかかわりない均等な機会の確保)
 法第10条の厚生労働省令で定めるときは、次の各号に掲げるとき以外のときとする。
1 事業主が、その雇用する労働者の定年(以下単に「定年」という。)の定めをしている場合において当該定年の年齢を下回ることを条件として労働者の募集及び採用を行うとき(期間の定めのない労働契約を締結することを目的とする場合に限る。)。
2 事業主が、労働基準法(昭和22年法律第49号)その他の法令の規定により特定の年齢の範囲に属する労働者の就業等が禁止又は制限されている業務について当該年齢の範囲の労働者以外の労働者の募集及び採用を行うとき。
3 事業主の募集及び採用における年齢による制限を必要最小限のものとする観点から見て合理的な制限である場合として次のいずれかに該当するとき。
イ 長期間の継続勤務による職務に必要な能力の開発及び向上を図ることを目的として、青少年その他特定の年齢を下回る労働者の募集及び採用を行うとき(期間の定めのない労働契約を締結することを目的とする場合に限り、かつ、当該労働者が職業に従事した経験があることを求人の条件としない場合であつて学校(小学校及び幼稚園を除く。)、専修学校、職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)第15条の6第1項各号に掲げる施設又は同法第27条第1項に規定する職業能力開発総合大学校を新たに卒業しようとする者として又は当該者と同等の処遇で募集及び採用を行うときに限る。)。
ロ 当該事業主が雇用する特定の年齢の範囲の特定の職種の労働者(以下この項において「特定労働者」という。)の数が相当程度少ないものとして厚生労働大臣が定める条件に適合する場合において、当該職種の業務の遂行に必要な技能及びこれに関する知識の継承を図ることを目的として、特定労働者の募集及び採用を行うとき(期間の定めのない労働契約を締結することを目的とする場合に限る。)。
ハ 芸術又は芸能の分野における表現の真実性等を確保するために特定の年齢の範囲の労働者の募集及び採用を行うとき。
ニ 高年齢者の雇用の促進を目的として、特定の年齢以上の高年齢者(60歳以上の者に限る。)である労働者の募集及び採用を行うとき、又は特定の年齢の範囲に属する労働者の雇用を促進するため、当該特定の年齢の範囲の労働者の募集及び採用を行うとき(当該特定の年齢の範囲の労働者の雇用の促進に係る国の施策を活用しようとする場合に限る。)。
2 事業主は、法第10条に基づいて行う労働者の募集及び採用に当たつては、事業主が当該募集及び採用に係る職務に適合する労働者を雇い入れ、かつ、労働者がその年齢にかかわりなく、その有する能力を有効に発揮することができる職業を選択することを容易にするため、当該募集及び採用に係る職務の内容、当該職務を遂行するために必要とされる労働者の適性、能力、経験、技能の程度その他の労働者が応募するに当たり求められる事項をできる限り明示するものとする。


雇用対策法施行規則第1条の3第1項第3号ロの規定に基づき厚生労働大臣が定める条件
 雇用対策法施行規則第1条の3第1項第3号ロの規定に基づき厚生労働大臣が定める条件は、当該事業主が雇用する特定の職種に従事する労働者(当該事業主の人事管理制度に照らし必要と認められるときは、当該事業主がその一部の事業所において雇用する特定の職種に従事する労働者)の年齢について、30歳から49歳までの範囲内において、事業主が募集及び採用しようとする任意の労働者の年齢の範囲(当該範囲内の年齢のうち最も高いもの(以下「範囲内最高年齢」という。)と最も低いもの(以下「範囲内最低年齢」という。)との差(以下「特定数」という。)が4から9までの場合に限る。)に属する労働者数が、範囲内最高年齢に1を加えた年齢から当該年齢に特定数を加えた年齢までの範囲に属する労働者数の2分の1以下であり、かつ、範囲内最低年齢から1に特定数を加えた年齢を減じた年齢から範囲内最低年齢から1を減じた年齢までの範囲に属する労働者数の2分の1以下であることとする。



参考リンク
愛知労働局「募集・採用における年齢制限の禁止について」
http://www2.aichi-rodo.go.jp/topics/docs/07-09-04-1.pdf
厚生労働省「雇用対策法・地域雇用開発促進法の改正について」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/other13/index.html


(宮武貴美)


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