[佐藤澄男ウィークリーレポート]ワークライフバランス
2007年9月9日付けの日本経済新聞「読書」のコーナーに「今を読み解く」と題し、編集委員の岩田三代氏が「ワークライフバランス」について取り上げています。「ワーク」は仕事、「ライフ」は生活、つまり、仕事と生活のバランスについてです。記事を少し抜粋でご紹介します。
「1990年代の米国で企業戦略として始まり、時を同じくして欧州で家族政策として注目された。私的な生活も楽しめる働き方でなければ優秀な人材は集まらない、家庭生活を大事にできる生き方でなければ少子化も解決しないとの考え方だ。」
日本でも、政府がこの問題について、今年に入ってからさまざまな会議を推進する等して、旗振りを進めています。今年中には憲章と行動指針を作成すると報じられていますが、これは非常に良いことだといえましょう。同記事によると、「全国の未就学児がいる父親の14%が23時を過ぎて帰宅する」ということです。家庭も大切にできると労働生産性も高いと言われますが、まさにその通りです。特にデスクワークの人達の生産性は、いわゆる気持ちの持ち方で集中力も変わり、自分の置かれている環境が仕事の能率や成果に非常に大きな影響を及ぼします。労働時間が長いから成果も大きい、という論理は単純には成り立ちません。時間をかけてダラダラ取り組んでいても、成果はもちろんあがりません。むしろ短時間であっても、集中して「やるときにはやる」という姿勢のほうが成果が大きいことも多々あります。根を詰めすぎては、人間は持ちません。やはり集中するには、ゆとりも必要なのではないでしょうか。
ワークライフバランスが企業にとってプラスの効果を発揮することは、疑う余地もありません。しかし実際にはほとんどの企業にとっては、どのように改善していったらよいのかについてはまだまだ未研究であり、未知の領域です。同記事はその終盤で「旧態依然の職場は多いし、管理職の意識改革も不十分」と指摘しています。まさにその通りといえます。特に中堅中小企業では、この部分の改革はほとんど進んでいないのが現状ではないでしょうか。まずトップそのものが、ワークライフバランスがこれからの優秀な人材を確保し企業を成長させるために必要であることを認識し、その意味をしっかりと理解することが大切です。また、個別事情もありますが、自社としての適応を検討し、結果として生産性を向上させ発展させるためには何をすべきかについて、まず真剣に考えなければなりません。更には、幹部や管理職等の意識改革を行い、ゆとりを持って仕事をするために今の業務をどう改革していったらよいかについて、現場レベルでも課題としてきっちりと取り組むことが必要です。
ワークライフバランスについて、企業も真剣に取り組む時期に来ているのではないでしょうか。
参考リンク
社会経済生産性本部「「ワーク・ライフ・バランスは新しい時代の生き方」を発表」
http://activity.jpc-sed.or.jp/detail/lrw/activity000834.html
(名南経営センターグループ 代表 佐藤澄男)
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