年金騒動を斬る(1)
年金騒動は定期的に起こる。今年は年金記録問題であるが、その前は2004年の政治家等の保険料未納問題だ。さらに過去にも数回あったが、そのときはほとんど選挙が絡んでいる。それもまるで計ったかのような絶妙のタイミングで問題が提起される。年金は政争の具なのである。年金問題は公約するにしても批判するにしても有権者に訴求し易い材料だ。しかしこれらの情報は誇張されていたり、根拠が曖昧なものが多い。また、マスコミは偏ったもしくは断片的な記事を出してくるし、本体の厚労省の情報も制度全体が複雑でデータが膨大過ぎるため、これも断片的になっている。バラエティー番組や週刊誌にいたっては無責任な騒じょうをしているとしか思えないものもある。つまり、多くの年金情報は発信者の都合で変形もしくは取捨選択されているのである。ゆえに、バッシング系の情報と、逆の言い訳系の情報、どちらも鵜呑みにして流されてはならない。年金を論ずるとき、ミクロ的には確かに個人の損得問題はあるが、マクロでは世界先進諸国の遠大な国家戦略であることを認識したい。
しかしながら社会保険庁の体たらくには、唖然とする。保険料横領に至っては公務員では重罪であり、刑事訴追も当然と考える。また、年金記録のずさんな管理体制も以前から判ってはいたものの、実務的には請求があったときに本人に確認しながら調べれば何とかなるという認識であったため、放置という重要問題は先送りされた。社会保険事務所の窓口は年金受給に関しては真摯な職員が多かっただけに実に遺憾である。また最近、厚生年金基金連合会の年金未払い問題がクローズアップされているが、これも騒ぎすぎの感がある。年金支給は本人申請が原則だ。転職や転居のある人の人生をトレースすることなど、国民総背番号制と高度IT社会が実現されていない現時点では不可能である。もちろん連合会のPR不足も指摘できないことはないが、巨額の未払いがある→連合会がずさん(悪事をしている?)→だから年金は信用ならん、という図式は短絡的にすぎる。
このシリーズではこのような年金に関する誤解と年金制度の問題を明らかにしていく。
(小山邦彦)