改訂された「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」
以前、このメインブログでもテレワーク人口が急増しているという記事を取り上げました。今日はこのテレワークに関連して出されているガイドライン「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」が平成20年7月28日に改訂されましたのでこれについて取り上げてみましょう。
そもそもこのガイドラインは、平成16年3月5日付け基発第0305003号として通知されました。その際にも増加する在宅勤務に対し、「適切に導入及び実施されるための労務管理の在り方を明確にし、もって適切な就業環境の下での在宅勤務の実現が図られること」を目的と掲げて策定されました。今回は、「在宅勤務の普及に伴い、その記載内容に関しさらなる詳細な解釈が各方面より求められている状況にある」ことに対応して改訂が施されました。
ガイドラインでは、労働基準関係法令の適用として、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働基準関係法令が適用されることを明確にし、適用における注意点を記載しています。その中でも特に労働時間に関しては、みなし労働時間制を適用することができるとしつつも、時間外労働、深夜労働面での問題が発生したためか、改訂により以下のようなかなり詳細な記述が加えられました。
(イ)在宅勤務についてみなし労働時間制を適用する場合であっても、労働したものとみなされる時間が法定労働時間を超える場合には、時間外労働に係る三六協定の締結、届出及び時間外労働に係る割増賃金の支払いが必要となり、また、現実に深夜に労働した場合には、深夜労働に係る割増賃金の支払いが必要となる(労働基準法第36条及び第37条)。
このようなことから、労働者は、業務に従事した時間を日報等において記録し、事業主はそれをもって在宅勤務を行う労働者に係る労働時間の状況の適切な把握に努め、必要に応じて所定労働時間や業務内容等について改善を行うことが望ましい。
なお、みなし労働時間制が適用されている労働者が、深夜又は休日に業務を行った場合であっても、少なくとも、就業規則等により深夜又は休日に業務を行う場合には事前に申告し使用者の許可を得なければならず、かつ、深夜又は休日に業務を行った実績について事後に使用者に報告しなければならないとされている事業場において、深夜若しくは休日の労働について労働者からの事前申告がなかったか又は事前に申告されたが許可を与えなかった場合であって、かつ、労働者から事後報告がなかった場合について、次のすべてに該当する場合には、当該労働者の深夜又は休日の労働は、使用者のいかなる関与もなしに行われたものであると評価できるため、労働基準法上の労働時間に該当しないものである。
[1]深夜又は休日に労働することについて、使用者から強制されたり、義務付けられたりした事実がないこと。
[2]当該労働者の当日の業務量が過大である場合や期限の設定が不適切である場合など、深夜又は休日に労働せざるを得ないような使用者からの黙示の指揮命令があったと解し得る事情がないこと。
[3]深夜又は休日に当該労働者からメールが送信されていたり、深夜又は休日に労働しなければ生み出し得ないような成果物が提出された等、深夜又は休日労働を行ったことが客観的に推測できるような事実がなく、使用者が深夜・休日の労働を知り得なかったこと。
ただし、上記の事業場における事前許可制及び事後報告制については、以下の点をいずれも満たしていなければならない。
[1]労働者からの事前の申告に上限時間が設けられていたり労働者が実績どおりに申告しないよう使用者から働きかけや圧力があったなど、当該事業場における事前許可制が実態を反映していないと解し得る事情がないこと。
[2]深夜又は休日に業務を行った実績について、当該労働者からの事後の報告に上限時間が設けられていたり労働者が実績どおりに報告しないように使用者から働きかけや圧力があったなど、当該事業場における事後報告制が実態を反映していないと解し得る事情がないこと。
在宅で勤務時間が比較的自由になり、また労務管理も難しいが故に発生する問題も多く、トラブルが発生する可能性も否定できません。導入前に就業に関するルールをきちんと定めておくことが求められます。なお、この改訂に合わせ、基発第0305001号(平成16年3月5日)も基発第0728002号(平成20年7月28日)に改正され、「労働者が起居寝食等私生活を営む自宅内で仕事を専用とする個室を確保する等、勤務時間帯と日常生活時間帯が混在することのないような措置を講ずる旨の在宅勤務に関する取決めがなされ、当該措置の下で随時使用者の具体的な指示に基づいて業務が行われる場合については、労働時間を算定し難いとは言えず、事業場外労働に関するみなし労働時間制は適用されないものである」とあったものが「自宅内に仕事を専用とする個室を設けているか否かにかかわらず、みなし労働時間制の適用要件に該当すれば、当該制度が適用されるものである」とみなし労働時間制の適用範囲の判断が若干緩やかになったようです。
関連blog記事
2006年7月7日「急増するテレワーク人口」
https://roumu.com
/archives/50634190.html
参考リンク
厚生労働省「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドラインの改訂について」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/03/h0305-1.html
(宮武貴美)
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