[ワンポイント講座]月の所定労働日数が変動するパートの年休付与日数の計算

 当ブログは基本的には人事労務管理の最新情報を中心にお伝えしていますが、もう少し基礎的な内容を増やして欲しいというご要望を以前から複数頂いておりました。そこで今後は原則水曜日を「人事労務ワンポイント講座」として、人事労務管理における迷いやすい実務ポイントの解説を行っていきたいと考えています。それでは初回の本日は、パートタイマーに対する年次有給休暇(以下「年休」)付与の実務ポイントについて取り上げましょう。



 10月を迎え、今春に入社した社員にも年休が付与される時期となりました。そんな中、実務上、取り扱いに困ることが多いのが、月の所定労働日数が業務の繁閑によって変動するパートタイマーへの年休の付与日数です。そもそも年休は、雇入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に10日間の年次有給休暇を付与するというのが大原則であり、週所定労働時間が30時間未満の労働者で、かつ、週所定労働日数が4日以下の労働者(いわゆるパートタイマー)の年休については、いわゆる比例付与の日数が与えられることになっています。 この付与日数を決定する際の基準は、付与の基準日に予定されている「所定労働日数」または「所定労働時間」によって判断することとされています。つまり、所定労働日数が3日、所定労働時間が5時間であれば、労働基準法施行規則第24条の3で定められた「週所定労働日数」の「3日」と「勤続年数」をみて、何日の付与となるのかを確認することになります。


 しかし、パートタイマーの実際の勤務を見てみると、所定労働日数が不確定となっているケースが少なくありません。例えば、パートタイマーとして大学事務の仕事をしているケースでは、春休みや夏休みの時期に業務量が極端に少なくなるため、月の勤務日数が通常と比べ大きく変動することがあります。例えば、通常は週5日の勤務をしており、休み期間については週2日の勤務となっているようなケースです。このようなケースにおいて週5日として判断すると通常の労働者と同じ日数を付与することになり、本当に同じ日数を与えなければならないのかと悩み、同じ日数ではないとすると一体何日付与すべきなのかとその取扱いに困ってしまいます。


 このように所定労働日数が大きく変動するケースについては、原則(付与の基準日に予定されている今後1年間の「所定労働日」に応じた日数)の取扱いではなく、基準日直前の実績日数を数えこれに基づいて付与をしていくことになります。具体的には、過去1年間の勤務日を月ごとに集計し、この合計日数を労働基準法施行規則第24条の3で定められた「1年間の所定労働日数」の区分に当てはめることになります。この取扱いは、「予定されている所定労働日数を算出し難い場合には、基準日直前の実績を考慮して所定労働日数を算出することとして差し支えないこと」という通達(平成16年8月27日基発第0827001号)に基づくものになっており、こうすることで実態にあった日数を付与することができるでしょう。また、補足情報ではありますが、入社して6ヵ月後に付与する年休日数については、過去6ヶ月間の勤務実績を2倍したもの(実績が80日であれば、2倍をした「160日」)を「1年間の所定労働日数」とみなして、労働基準法施行規則第24条の3で定められた表にに当てはめ、対応した日数を付与することになります。


[関連法令]
労働基準法施行規則 第24条の3
 法第三十九条第三項 の厚生労働省令で定める時間は、三十時間とする。
2 法第三十九条第三項 の通常の労働者の一週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数は、五・二日とする。
3 法第三十九条第三項 の通常の労働者の一週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数と当該労働者の一週間の所定労働日数又は一週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数は、同項第一号 に掲げる労働者にあっては次の表の上欄の週所定労働日数の区分に応じ、同項第二号 に掲げる労働者にあつては同表の中欄の一年間の所定労働日数の区分に応じて、それぞれ同表の下欄に雇入れの日から起算した継続勤務期間の区分ごとに定める日数とする。
(表は省略)
4 法第三十九条第三項第一号 の厚生労働省令で定める日数は、四日とする。
5 法第三十九条第三項第二号 の厚生労働省令で定める日数は、二百十六日とする。


[関連通達]
訪問介護労働者の法定労働条件の確保について(平成16年8月27日 基発第0827001号)
 年次有給休暇が比例付与される日数については、原則として基準日において予定されている今後1年間の所定労働日数に応じた日数であるが、予定されている所定労働日数を算出し難い場合には、基準日直前の実績を考慮して所定労働日数を算出することとして差し支えないこと。



参考リンク
福岡労働局「年次有給休暇」
http://www.fukuoka.plb.go.jp/5kanto/kaisei/kaisei04.html
厚生労働省「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/041115-1.html
全国ホームヘルパー協議会「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」
http://www3.shakyo.or.jp/hhk/siryousitu/sonotasiryou/roudoujikan.pdf


(福間みゆき)


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