割増率引上げを中心とした改正労働基準法成立 平成22年4月1日に施行

 ホワイトカラーエグゼンプション問題など様々な紆余曲折があった改正労働基準法ですが、先ほど参議院本会議において可決・成立(投票総数 230 賛成票 217 反対票 13)しました。主とした内容は60時間を超えた時間外労働に対する50%の割増率の適用、年次有給休暇の時間単位付与の解禁の2点となっていますが、施行日は平成22年4月1日となります。特にの割増率引上げについては非常に大きな影響が予想されますが、中小企業については「当分の間」適用が猶予されます。一方、の年休の時間単位付与については労使協定の締結が前提となっていますが、従業員からの要望が強い内容でもあるため、多くの企業ではその対応が求められることになるでしょう。その際、時間単位の付与が認められるのは5日以内に限られるため、年休の管理が非常に煩雑になることが予想されます。


 なお、今回の改正内容について、以下に記載しておきます。



労働基準法の一部を改正する法律


労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)の一部を次のように改正する。


●第十二条第三項第四号中「第三十九条第七項」を「第三十九条第八項」に改める。
●第三十六条第二項中「労働時間の延長の限度」の下に「、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率」を加える。
●第三十七条第一項に次のただし書を加える。
 ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
●第三十七条第二項の次に次の一項を加える。
 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。
●第三十八条の四第五項中「第三十四条第二項ただし書、第三十六条第一項」の下に「、第三十七条第三項」を加え、「次条第五項及び第六項ただし書」を「次条第四項、第六項及び第七項ただし書」に、「第三十六条、第三十八条の二第二項」を「第三十六条、第三十七条第三項、第三十八条の二第二項」に改め、「第三十六条第二項」の下に「、第三十七条第三項」を加える。
●第三十九条第四項中「前三項」を「前各項」に改め、同条第六項中「有給休暇の期間」の下に「又は第四項の規定による有給休暇の時間」を加え、「平均賃金又は」を「それぞれ、平均賃金若しくは」に改め、「通常の賃金」の下に「又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金」を加え、「その期間について」を「その期間又はその時間について、それぞれ」に改め、「相当する金額」の下に「又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額」を加え、同条第三項の次に次の一項を加える。
 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第一号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前三項の規定による有給休暇の日数のうち第二号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができる。
一 時間を単位として有給休暇を与えることができることとされる労働者の範囲
二 時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(五日以内に限る。)
三 その他厚生労働省令で定める事項
●第百六条第一項中「第三十六条第一項」の下に「、第三十七条第三項」を加え、「第三十九条第五項及び第六項ただし書」を「第三十九条第四項、第六項及び第七項ただし書」に改める。
●第百十四条中「第三十九条第六項」を「第三十九条第七項」に改める。
●第百三十六条中「第三項」を「第四項」に改める。
●附則に次の一条を加える。
 第百三十八条 中小事業主(その資本金の額又は出資の総額が三億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については五千万円、卸売業を主たる事業とする事業主については一億円)以下である事業主及びその常時使用する労働者の数が三百人(小売業を主たる事業とする事業主については五十人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については百人)以下である事業主をいう。)の事業については、当分の間、第三十七条第一項ただし書の規定は、適用しない。


附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、平成二十二年四月一日から施行する。
(罰則に関する経過措置)
第二条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(検討)
第三条 政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、この法律による改正後の労働基準法(以下この条において「新法」という。)第三十七条第一項ただし書及び第百三十八条の規定の施行の状況、時間外労働の動向等を勘案し、これらの規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
2 政府は、前項に定めるものを除くほか、この法律の施行後五年を経過した場合において、新法の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
(地方公務員法の一部改正)
第四条 地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)の一部を次のように改正する。
 第五十八条の見出しを「(他の法律の適用除外等)」に改め、同条第三項中「第三十二条の五まで」の下に「、第三十七条第三項」を加え、「第三十九条第五項」を「第三十九条第六項」に改め、同条第四項中「とする」を「と、同法第三十九条第四項中「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第一号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前三項の規定による有給休暇の日数のうち第二号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより」とあるのは「前三項の規定にかかわらず、特に必要があると認められるときは、」とする」に改める。
(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の一部改正)
第五条 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成四年法律第九十号)の一部を次のように改正する。
 第七条第一項中「第三十六条第一項、第三十八条の二第二項」を「第三十六条第一項、第三十七条第三項、第三十八条の二第二項」に、「第三十九条第五項」を「第三十九条第四項及び第六項」に改める。
(国有林野事業を行う国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する特例法等の一部改正)
第六条 次に掲げる法律の規定中「第三十九条第七項」を「第三十九条第八項」に改める。
一 国有林野事業を行う国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する特例法(昭和二十九年法律第百四十一号)第七条第五項
二 地方公務員の育児休業等に関する法律(平成三年法律第百十号)第二十条第一項
三 独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第五十九条第五項



関連blog記事
2008年11月19日「改正労働基準法案 昨日、衆議院を通過」
https://roumu.com
/archives/51453887.html


参考リンク
参議院「議案審議情報:労働基準法の一部を改正する法律案」
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/gian/17003166081.htm


(大津章敬)


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